南予医学雑誌 第15巻
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南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-24- (図2)と(図4a)を比較すると,撮影室2の一部が女性の2群に相当することがわかる。これは撮影室2のみX線管球と制御装置をつなぐケーブルが管球の側面から前方に向かって垂れるように設置されており,SSD測定のためにSESD-10が発している超音波にケーブルが干渉し,SSDを実際よりも短く認識していたためと考えられた。式①より,ESDは距離の逆二乗に比例するため,SSDの変化に大きく影響される。よって女性2群はSESD-10の算出誤差といえる。 (図4a)では,ESDは撮影室によらず同じ傾向を示しているが,撮影室1のESDが他の撮影室と比較するとわずかに大きくなっている。これはCR(Computed Ra-diography)装置が,撮影室1と他の撮影室で異なることに原因があると考えられる。CR装置で撮影を行う場合,X線撮影装置からX線が照射されるとIP(Imaging Plate)に被写体のX線像が蓄積記録される。このとき散乱線による写真のぼけを低減するためブッキーブレンデが用いられる。撮影室1 では塵肺健診が行われるためグリット比が12:1の物を使用しており,撮影室2,3,4ではグリット比が10:1のものを使用している。グリット比が高いほど散乱線の除去率は高くなるが,その分撮影線量は多くなる。今回の結果にはこのグリット比の差が撮影室1のESDをがわずかに大きくしていると思われる。 (図4b)では,撮影室1でS値が最も低く,110~220と推奨値(115~220)内にほぼ収まっている。撮影室2で200~300付近,撮影室3,4では350~600付近に分布している。先に述べたとおり撮影室2,3,4ではカセッテを用いて撮影を行っており,これらは操作室にある独立した3台の読み取り装置でデジタル画像に変換されている。ESDはほとんど差が無いため,S値の違いの原因は各撮影室の画像の読み取り装置の違いと考えた。撮影室2,3,4では撮影後,最も近い装置で読み取りを行うことが多い。そこで,撮影条件を管電圧120[kV],管電流200[mA],mAs値を5mAsとし,ESDを0.291[mGy]の条件で撮影を行い,それぞれの最も近い読み取り装置で画像を読み込んだ。このときのS値の平均値は撮影室2が186,撮影室3が409,撮影室4が343となった。これは(図4b)の結果とほぼ一致した。(図4b)で撮影室3と4の分布が類似しているのは,両者の読み取り装置が隣り合っているためと思われる。撮影室3,4は撮影枚数の多い検査を担うことが多く,必ずしも最も近くの読み取り装置を使用できる状況にあるわけではない。そのため,隣り合う装置の使用可能な方をあえて選択し読み込んだものが含まれている結果となった。d)撮影条件の適正化への試み 撮影室1のS値が概ね適正範囲に収まっていたことをふまえ,これを基準として読み取り装置の感度のバラつきを補正した。撮影室1のS値は0.44[mGy](1.7[mR])に対して110であった。撮影室2,3,4はそれぞれ121,258,236と使用基準内ではあったが,撮影室1と比較するとS値が大きくなっていた。そこで撮影室3, 4に関しては富士フィルムメディカルに読み取り装置による感度のバラつきの補正を依頼した。現在,撮影室2,3,4の読み取り装置のS値は121,115,108となり撮影室1と近い値を示すようになった。b)システム感度の項で述べた通り撮影室1~4はX線量に大きな差はみられなかったため,撮影室2,

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