南予医学雑誌 第15巻
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岡田、他:術前経口補水療法南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-15-OS-1は食塩とブドウ糖を混合し,水に溶かしたものであり,軽度から中等度の脱水状態において水・電解質を補給するのに適している。今回我々はArginaid WaterにOS-1を加えた,当院独自の術前経口補水療法について検討した。 患者アンケートの結果と経口補水液のコンプライアンスの検討では,経口補水液は量として少ないとは考えられなかった。午前手術750ml,午後手術1250mlの経口補水は適量,またはやや多い可能性はあるが,自由に飲水していただいた結果であり問題はないものと思われた。実際,コンプライアンスは良好で,Arginaid waterでは約9割であった。OS-1のコンプライアンスが約8割とややArginaid waterより落ちるのは嗜好の問題かもしれない。 術前経口補水療法は術前だけでなく術後2日目に経口補水液が開始されることから,消化管に負担をかける可能性が危惧される。しかし縫合不全をはじめとしたSSIの増加は,経口補水療法導入前6例,導入後は3例で増加は認められず危険はないものと考えられた。ESPENのガイドラインでもERASプロトコルにより術後早期からの経口摂取は推奨されている。術前経口補水療法を導入することによる臨床的効果を結腸・直腸癌手術患者で検討した結果,平均在院日数は有意ではないが短縮していた。経口補水療法を導入することで術当日朝と術後2日目の食事料金加算が可能となり,1日あたりの食事療養費は有意に増加していた。1日に300円程度の増収であり,平均在院日数の短縮の効果も含めて包括医療下では経営上重要な増収につながることが推測された。 謝   辞 臨床研究に協力いただいた麻酔科の先生,外科病棟の看護師の皆様,そして医事課の端野様に感謝します。参考文献1)  岩坂日出男,古賀義久:違いのわかる術前飲水 炭水化物含有飲料水による術前補水. 臨床栄養 2010; 116(1): 30-36.2)  Ljungqvist O, Søreide E.: Preoperative fasting. Br J Surg 2003; 90(4): 400-406.3)  Fearon KC, Ljungqvist O, Von Mey-enfeldt M, et al.: Enhanced recovery after surgery: a consensus review of clinical care for patients undergoing colonic resection. Clin Nutr 2005; 24(3): 466-477.4)  Varadhan KK, Neal KR, Dejong CH, et al.: The enhanced recovery after surgery (ERAS) pathway for patients undergoing major elective open colorectal surgery: a meta-analysis of randomized controlled trials. Clin Nutr 2010; 29(4): 434-440.5)  Gustafsson UO, Scott MJ, Schwenk W, et al.: Guidelines for perioperative care in elective colorectal surgery: Enhanced Recovery After Surgery (ERAS®) Society recommendations. Clin Nutr 2012; 31(6): 783-800.6)  櫻井洋一:外科疾患の静脈経腸栄養ガイドライン. 静脈経腸栄養 2013; 28(6): 1231-1238. 

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