南予医学雑誌 第15巻
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南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-14-平均在院日数と食事療養費の検討においてはこれらをさらに除外し,前期35例,後期39例の74例で検討した。その結果,平均在院日数は前期15.0日に比較し後期13.7日と有意ではないが短縮していた(図4)。1日あたりの食事療養費は前期1273円に比べ後期は1532円と有意に(p=0.02)増加していた(図5)。考   察 周術期治療の最大の目標は回復力増強にある。欧州ではヨーロッパ静脈経腸栄養学会(ESPEN)を中心に手術患者の術後回復力を高めようとする,術後早期回復プロトコルERAS (Enhanced Recovery After Surgery)が進行している。ERASプロトコルはエビデンスに基づいた周術期の種々の患者管理方法であり,当初は結腸癌手術患者で施行され,このプロトコルによってそれまで7日間であった結腸癌術後在院日数が3日まで短縮する事が出来たという報告2)は注目を集め,多くの臨床試験で検討されメタ解析で有効性が確認されるに至った3)4)。ESPENの経腸栄養ガイドラインでは巻頭のサマリーに「周術期管理にはERASが最も重要である」と記載されているように,ERASプロトコルにおいて栄養管理は重要な位置を占めている5)。 術前の一晩絶飲食管理は科学的根拠に基づいたものではなく長らく検証されることはなかったが,近年の研究でclear uid(清水)は摂取後1時間で,固形食は3時間で胃から排泄されており2),待機的手術では術前絶飲食が必須であるとする考え方は科学的根拠はないことが明らかとなった。現在アメリカ麻酔学会の絶飲食に関するガイドラインでは,clear uidは術前1時間まで,食事は8時間まで摂取可とされている。ERASプロトコルにおいては脱水リスクや周術期のインスリン抵抗性などの改善のため術前炭水化物補水を勧めている。もちろん術前の口渇,空腹感や不安の軽減にも有用であろうことは間違いない6)。 術前炭水化物補水として,日本ではERASプロトコルにおいて勧められる12.5%の炭水化物含有飲料水が利用できないため,類似した18%のArginaid Waterを使用される事が多い。しかしこのArginaid waterには電解質が含まれていない。一方,(図4) 平均在院日数(図5) 食事療養費図4、平均在院日数0 5 10 15 20 前期 後期 15 13.7 P=0.07日*Student t-test図5、食事療養費0 500 1000 1500 2000 前期 後期 1273 1532 円 P=0.02*Student t-test

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