南予医学雑誌 第15巻
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岡田、他:術前経口補水療法南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-11-はじめに 周術期の栄養管理においては,従来は手術侵襲に伴う異化亢進による蛋白喪失を軽減し術後の回復を促進する事を目的としたが,最近では術前からの栄養管理を積極的に行う事が侵襲の低下のみならず長期予後にも影響を与える事が明らかになってきている。さらに術前の絶食期間を短縮する事により術後早期からの腸管機能回復に役立つという報告がなされてきている。栄養投与だけでなく腸管機能促進と侵襲軽減により回復を促進する介入は意義深い。 術前の飲水に関しては,炭水化合物含有飲料を麻酔導入2-3時間前までに摂取することで,術前の口渇,空腹,不安を軽減できるだけでなく,術後のインスリン抵抗性も改善するとされ1),多くのエビデンスが示されている。今回我々は炭水化物含有飲料水(Arginaid water)に脱水症状の治療に用いられるOral Rehydration Solution (OS-1)を加えた,当院独自の術前経口補水療法について検討した。対象と方法 術前経口補水液として,翌日午前手術の患者にはArginaid water 250mlとOS-1 500mlを,午後手術の患者にはArginaid water 250mlとOS-1 1000mlを自由に飲水可能として飲水していただいた。1 :患者アンケートより当院の経口補水療法を評価した。対象は2011年9月7日̶11月15日の間で99例の患者にアンケートを実施した。2 :経口補水液は自由に飲水可能としたが,実際に飲水し摂取出来ているかコンプライアンスを検討した。対象は2011年10月-2012年3月の外科と口腔外科の定期手術患者369例。この飲水量は患者の自己申告ではなく看護師に実際に計測していただいた。また有害事象があれば報告していただいた。3 :術前経口補水療法を導入したことによる効果を平均在院日数と食事療養費から検討した。対象は2011年の外科における結腸・直腸癌手術患者で,経口補水療法導入前(前期:2011年4月-9月)と導入後(後期2011年10月-2012年3月)で比較検討した。待機的手術を対象とし緊急・準緊急手術は除外した。また人工肛門管理を要する症例は除外し,83例で検討した。食事療養費は医事課で実際に算定していただいた。統計処理において2群間の平均値の比較検定にはStudent t-testを用いP<0.05を有意水準とした。結   果1:患者アンケート結果 99例にアンケートを行い80%の回答を得た。年齢は60歳以上が66%と高齢患者が多かった。経口補水液の量は少ないとする意見はなく,多い・やや多いとする意見が半数を超えた。飲水量は86%の患者で全量飲水できており,その結果口喝感は抑えられていた。絶飲食との比較では点滴なしで経口補水液を飲める方が良いとした意見が72%に対して,点滴で絶飲食が良いとした意見は6%であり,経口補水液は好評であった。経口補水液の飲みやすさとしてはArginaid waterが好評であった(図1)。2:経口補水液の飲用率(コンプライアンス) 369例の内訳は,外科患者326例,口腔外科患者43例であった。午前手術は296例でそのうち飲水量が正確に計測できた症例

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