南予医学雑誌 第15巻
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市川:なんよだより南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-119-一般病床550床とした。翌1992年4月には,住民念願の南予救命救急センターを,愛媛県で唯一県立病院以外の市立宇和島病院に併設,1999年に感染症病床4床を設置した。2001年3月には国立療養所愛媛南病院の移譲に伴う結核病床の廃止・県立北宇和病院への移管に伴い結核病床5床を再開し,総病床559床の病院となった。このように宇和島病院は常に地域の要望に対応し,地域住民が安心して暮らせる環境整備を行っている。 この間,病院の老朽化が進み,住民の求める医療を行い職員が安心してそれぞれの役目を果たすことが構造上不可能となり,紆余曲折を経て2001年石橋市長は病院改築を決定された。その方針を受けて,これまで宇和島病院が1世紀の間,四国西南地域で果たしてきた役割と歴史,これから行うべき医療,今後の医療資源等を検討した結果,改築後の病床数を435床の急性期病院として再出発している。医療環境の変化 戦後の日本の医療は自由診療,自由開業,国民皆保険制度が基本であったため,県庁所在地を中心に都市部では民間の大病院が増え,公立病院の役割に変化がみられるようになった。また,高度経済社会で国民の価値観が多様化し,医療が単に福祉社会に奉仕するだけではなく,産業の一環としてみられる面があり,起業家と同じように大病院の経営者が医療の世界でも成功者とさえ見なされる傾向が生じている。 科学の進歩は医療の分野にも急速に取り入れられ,これまで不明であった病態の実態が解明され,それに伴って種々の薬品等が開発され,さらに機器の開発・進歩は日進月歩である。その結果,医療費は必然的に年々増加している。一方で国の財政事情は先進国で最悪の状態となり,国家予算に占める医療関係費用の割合が増大し,一部に医療費の高騰が国家にとって悪であるか・・・・・のような・・・・風潮さえみられる。加えて,近年不安定な政権が続き,日本経済はかつてのような成長はみられなくなり,追い打ちを掛けるように東日本大震災が発生,国家予算はさらに圧迫される事態となっている。これらのことが,財政基盤が弱く国から配分される交付税等に依存している地方に不安定化をもたらし,若者は都会に流出し,地方の人口減少と少子高齢化が急速に進んでいる。宇和島市でも2014年9月1日現在,人口81,690人と合併時より約1万人減少している。この内65才以上が28,076人(35%),75才以上15,113人(19%)で年々増加傾向にある。日本は医学の進歩と国民皆保険制度にみる医療制度等で世界最長寿国となり,当然のこととして高齢者の増加は医療費の増加をもたらしている。2025年には全国で4人に1人が75才以上になると推定され,現在の医療制度を維持するためにはどうすればよいかを国民は考える時期にきている。 近年,インターネット等情報手段の急速な進歩により,全国一律に膨大な情報が氾濫する時代となり,中には必ずしも正確とはいえない情報により国民の誤解を招くことも稀ではない。医療においても例外ではなく,全ての公立病院に特殊な医療を求める傾向さえみられる。こうした中で,特に公立病院の職員は医師に止まらず,多くの職員がその専門的医療をチーム医療で行う一員となるために,常に知識や技術の習得,患者対応,複雑な書類の作成等に追われ,

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