南予医学雑誌 第15巻
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南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-112-た中,私達で出来ることは見学に来る学生に金子先生の考えをそのまま伝え,学生の望む研修に沿っているかの確認をとることでした。結果としてはほぼ同じ考えを学生も持っており,診療圏の広い当院だとコモンな症例からレアな症例まで,まんべんなく学べるのではとの考えで見学に来ている学生が大半を占めておりました。 こうした意見聴取を行い,再度金子先生との協議の中で示していただいた具体的なテーマが「三次救急まで診ている当院ならではのジェネラルな研修」でした。つまり初期研修においては総合的な医師を育てるべく,症例経験を多く積ませたい。それには研修当初から救急経験をさせるべきという考え方で,4月からファーストタッチを1年次の研修医にさせるという,思い切ったものでした。また,金子先生は沖縄県立中部病院で取り入れられていた「屋根瓦方式」も同時に取り入れたいとの意見でした。「屋根瓦方式」とは,瓦屋根の構造である「上の瓦で下の瓦を支え,その瓦が下の瓦を支える」ように,先輩医師(指導医)が後輩医師を教え,後輩医師がそのまた後輩医師を教えるものです。救急のファーストタッチを臨床経験のない1年次研修医にいきなりやらせることはリスクも高いので,2年次研修医にフォローをさせ,そのフォローは上級医が行い,最終的な責任は指導医に…との研修を,新年度から始めたいと金子先生はきっぱりおっしゃいました。 この考え方について,濱田御大は「金子に任せる」と即ご賛同いただきましたが,当時の1年次の森田先生,岡本先生に伝えるのは勇気が必要でした。新1年次研修医は4名ですが,上位の研修医はお二人なので,2枚の瓦で4枚の瓦を支える必要があり,上級医が自分の勉強をしながら後輩二人の面倒まで見ることに反対されないか,不安でした。しかし,お二人に伝えたところあっさり了解をもらえました。こちらが逆に不安になり「大丈夫ですか。」と岡本先生に聞いたところ,あっさり「私達ももうこの病院のやり方には慣れたので,大丈夫ですよ。」との答えをいただき,濱田さんと医師の成長速度ってすごいと驚くばかりでした。 屋根瓦でのジェネラルな研修が固まりつつある中,更に濱田御大から一つのテーマが与えられました。それは「スタンダードな医師を育てたい。」というもので,「医師になって経験を積んでも,実践ばかりで知識が偏った医師では駄目!いつどんな場所においても医療行為を適切に行うには,最低限身につけるべき知識がある。それは自主性に頼るのではなく,こちらが強制的に与える詰め込み方式の教育が必要だ!」との御大の考え方から与えられたテーマでした。 そこで新プログラムの中に座学も取り入れ,4月から毎週1回,職員による講義も行うこととしました。毎週3回ある院内カンファレンスに加えての講義でしたが,御大の揺るぎない意志によって採用に至り,平成23年度からのプログラムの骨子が固まりました。同時期に国家試験の結果発表があり,4名全員が合格。本人から連絡をもらい,再度濱田さんと跳ね上がって喜んでおりました。 この年マッチング,国家試験を経て誕生した研修医は丸田先生,松坂先生,永岡先生,中野先生。私にとっては学生時代から見てきた皆さんが医師として誕生する過程まで見届けることが出来た,感慨深い年と

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