南予医学雑誌 第15巻
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南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-110-の要望に応じて,随時1ヶ月単位で組み替えを行える自由度の高さや,数々の臨床実習用のシミュレーター,またそれらを設置するためのトレーニングルーム等,当院の環境とはほど遠い,充実した研修環境に打ちのめされた気分で宇和島に帰ってきました。当時帰院して,とぼとぼと研修医の部屋に行って,部屋におられた1年次研修医の森田先生に大学の状況を伝えた上で,「自分達は何も先生方に提供できていないと思います。」と話した時,今でも忘れられない言葉をいただきました。 「岩村さん,大学が良いと僕は全く思いませんよ。僕はこの病院の研修スタイルそのものに惹かれてこの病院を選んだ訳で,研修機材や研修部屋で研修病院を選択した訳ではありません。そんなのいらないですよ。」 きっぱりと言い切ったこの言葉は,その後の私の臨床研修に対する姿勢に大いに影響しております。森田先生の何気ない一言のおかげで,無理に背伸びせず,当院の許される範囲で日々成長していけばいいんだと気がつきました。ちなみに濱田御大にも報告したところ「行く意味が分からん。同じ環境の病院(市中病院)に勉強に行かんで何吸収すんの。」とばっさり切り捨てられた点も気持ちの切り替えに大きく寄与しております。 大学病院での視察でモチベーションが落ちかけになりましたが,上記の通りお二人からの温かい言葉のおかげで気持ちを持ち直し,改めて市中病院の視察を行うべく,まずは事前のリサーチから始めました。ポイントは2つで,当時研修病院のステータスになるかもと噂のあった「臨床研修病院機能評価」を受審済みの病院であることと,マッチング率100%の人気病院であることです。 研修プログラム副委員長の金子先生にも相談し,候補としてあがったのが,当院と同規模病床でありながら研修医数が1学年12名と,当院の3倍かつ例年フルマッチ(定員に対する採用率100%)を誇る超人気病院であり,かつ機能評価も最高評価である更新期間4年を獲得した徳島赤十字病院でした。なんのコネクションも持っていませんでしたが,とりあえず頼んでみようと連絡したところ,快諾いただき前回のリベンジとばかり再度事務局で徳島に公用車を走らせました。 大学と同様に専属の医局員による細かなプログラム調整や,専用の医局(ガラス張り),広い図書館等目を見張る施設でしたが,今回は惑わされることなく,ソフト面での研修医の環境作りのヒントになる部分を意見聴取しました。要点は以下の通りです。1 .研修医プログラムは1年先輩の研修医が自分のプログラムとあわせて検討,決定まで至っている。2 .地元の開業医とのつながりが深いため,1ヶ月単位で4箇所,開業医をローテーションしている。3 .研修医の評価については「研修医の到達目標と評価表」を作成し,常に自己評価を行うこととしている。4 .研修医募集については,大学での説明会以外に大学に近い居酒屋を貸し切って,学生と医師がお酒を飲みながら意見交換を行っている。費用は病院負担。5 .副院長が香川県にも遠征し,個別に学生とメール交換を行っている。 この中で至急当院でも導入したいと思われたのは「1.」と「4.」でした。特に「4.」

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