南予医学雑誌 第14巻
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毛利:なんよだより南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-91-などが病気を機に,複雑に絡み合っています。このような相談を聴いていると,少子高齢化や経済的にも厳しい社会情勢の影響を肌で感じ,生活支援である退院支援の重要性と行政との連携の必要性を強く感じます。そして,この相談を皆で共有し,院内だけでなく地域の医療・介護従事者皆で地域の問題として捉え,様々な改善のきっかけになればいいなと思います。実際,サービスとしての相談支援だけではなく,「相談支援にできること」を追求する「第2回がん相談研究会」や「地域相談支援フォーラム」など全国的な研究会が開かれるようになってきました。 4年間患者様の様々な相談を経験して今感じるのが,患者は「その人の生活の中に病院がある」ということです。当たり前のことですが,私達医療者は入院中もしくは外来受診時の患者しかみえません。生活者としての患者は,患者や家族が話してくれない限り,なかなか理解することが難しいのです。家族の中での役割や親・子・兄弟との関係性,さらには地域の中で,その人の生活があります。その中で病気とどう付き合えばその生活が維持できるのか,どうなれば本人は幸せなのか,共に考えることが医療・介護者の支援だと思います。 地域の在宅サービス担当者さんがよく言われます。「病院は患者さんの病気を治すことを考える。私達は利用者さんの生活を考える」と。でも,どちらも少し違っていて「病気をもったその人の生活を考える」ことが大切なのではないかと思います。その中でその人の意思がより良い形で反映され,選択されればいいのではないかと思うのです。医療者に左右されるのではなく,その人がどう選択するのかは自由なので,「話し合った結果自分で考えて選択できる」ことが大切だと思います。それが当院が理念として掲げる「患者中心の医療」の実践ではないかと思うのです。病気を経てはじめて,今後の生活や生きがい,そして家族を考えることが多くあります。地域連携室のさまざまな取り組みが,少しずつでもこの地域の医療と介護と生活を結び付け,家族が支え合って安らかな生活ができればと願っています。 超高齢・多死社会となる2025年問題を見据えて,地域包括ケアの取り組みが県や市でもなされ始めました。あと12年後の未来に向けて,「患者の生活」を支援する地域連携室として,院内はもちろん,他院や施設,行政機関,地域との協力をさらに深め,「私たちの街の頼れる市立宇和島病院」と思って頂けるよう,高齢社会の最先端病院としての体制作りに取り組んでいきたいと思います。

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