南予医学雑誌 第14巻
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中川、他:細胞診の現状南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-81-(図3)核クロマチンの増量が目立ち、細胞質内には細胞質内小腺腔が観察される。4.尿 自然尿は採取が容易なため,尿路系腫瘍のスクリーニングとして頻繁に提出される2)。当院では二番目に多い検体数である。一般に膀胱鏡で腫瘍が確認されていても low grade の腫瘍細胞は剥離も少なく細胞診では陰性となることが多い。腫瘤を形成せず膀胱粘膜をはうように増殖し,膀胱鏡ではビロード状発赤が見られる上皮内癌のような場合には細胞診の威力が発揮される。高度異型尿路上皮癌の細胞像を提示する(図4)。5.リンパ節 捺印や穿刺吸引細胞診が施行される。捺印は組織像をある程度推測できるが,穿刺は採取部位が限局されるため,情報としては形態情報に限られるのが通常であり,一番判断が難しく鑑別困難になることも多い。鏡検の際には転移性腫瘍の場合は当然のことながら,リンパ節には存在しない上皮性細胞の有無,悪性リンパ腫の場合は出現する小リンパ球,中リンパ球,大リンパ球の割合や核異型などを判定の基準とする5)。わが国では九州・四国地方に多い成人T細胞性白血病/リンパ腫の捺印細胞像を提示する(図5)。6.体 腔 液 炎症性の体腔液なのか,腫瘍性の体腔液なのかを鑑別する。最近は術中洗浄液の提

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