南予医学雑誌 第14巻
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南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-78-はじめに 市立宇和島病院(以下,当院)では年間約6,500件の細胞診断を実施しており,提出される検体は,産婦人科領域,甲状腺,乳腺,尿,リンパ節,体腔液(胸水,腹水,心嚢液),その他(呼吸器,消化器,唾液腺など)と多岐にわたっている。また検体の種類や部位によって判定基準も異なっている。 本稿では,当院の細胞検査士はどのような細胞像を観察・判定しているのか,代表的な細胞像を提示し,簡単な解説を加えた。1.産婦人科領域 当院の検体として最も多い材料で,年間4,000件程度提出される。剥離細胞診とし 市立宇和島病院における細胞診の現状 中川健司、清家美帆子、菅恭弘、中西護、松影昭一 市立宇和島病院 臨床検査科(南予医誌 2013;14:78-83.)  目でみる症例受稿日 平成25年4月15日受理日 平成25年7月19日連絡先 〒798-8510 愛媛県宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院 臨床検査科 中川 健司ての歴史も古く,検診でも利用されている。パパニコロウ分類や従来の日母分類にかわり,2009年4月から子宮頸部細胞診の新しい報告様式である「ベセスダシステム2001」が導入された1)。このシステムの特徴はHPV(human papilloma virus)感染が子宮頸癌の原因であるとの概念から出発しているところである。判定区分はNILM(陰性),LSIL(軽度異形成),HSIL(中等度異形成,高度異形成,上皮内癌)など細分化され複雑なものとなっている。SILとはsquamous intraepithelial lesion : 扁平上皮内病変のことであり,HPV感染と発癌に関する研究から設定されたものである。この報告様式を採用するにあたって,検体処理方法も液状処理細胞診標本(Liquid-based cytology:LBC法)に変更となり,かなり合理的に鏡検することができるようになった。細胞診でLSILと判定した細胞像を提示する(図1)。なお,LSILの判定基準は(表1)に示す通りである。

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