南予医学雑誌 第14巻
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南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-6-(図5) GFRが60以上の高齢者においてもシスタチンCは死亡予知因子である図5GFRが60以上の高齢者においてもシスタチンCは死亡予知因子である2.52.01.51.00.50.00.60.81.01.21.4Hazard RatioCreatinine Concentration,mg/dL2.52.01.51.00.50.0406080100120140Hazard RatioEstimated GFR by MDRD,mL/min per 1.73㎡2.52.01.51.00.50.00.60.81.01.21.4Hazard RatioCystatin C Concentration,mg/Lクレアチニン推定GFR シスタチンC 文献13)より引用を行った13)。そしてシスタチンCのみが死亡の独立した因子であることを示した(図5)。腎機能障害は心血管病の発症や死亡の独立した因子であることは間違いないが,シスタチンCはこれを超える心血管病や死亡の予測因子であることが推測される。それではなぜこのようにシスタチンCは,腎機能を超えた心血管病や死亡の予測因子となるのだろうか。シスタチンCと炎症 私たちは88人の高血圧患者を対象として,心血管病や死亡の独立した予測因子である炎症性サイトカイン(IL-6とTNF-α)およびCRPとシスタチンCとの関連を検討した14)。その結果,シスタチンCは,CRPとは有意の相関を認めなかったものの,IL-6 (図6a)とTNF-α(図6b)とに有意の相関を認めた。さらにシスタチンCの独立した規定因子はTNF-α, GFR および脈圧であった。以上のことから,シスタチンCは腎機能に加えて,炎症を表すマーカーであること示唆され,このことが,シスタチンCが心血管病や死亡の規定因子になる可能性が考えられた。おわりに 近年,多くの症例で血中シスタチンCの測定が行われ,腎機能の指標としての有用性は確立されたと言ってよい。また,様々な疾患におけるシスタチンCの変動も解析されつつある。現在シスタチンCで最も期待されるのは,シスタチンCの測定により日本において急速に増加している糖尿病性腎症や高血圧性腎硬化症を早期に診断し,末期腎不全への移行を可能なかぎり食い止

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