南予医学雑誌 第14巻
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渡森、他:骨粗鬆症の非定型骨盤骨折例南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-75-(図5)Aに位置付けられており,椎体骨折や非椎体骨折,大腿骨近位部骨折のリスクの高い症例で第一選択薬とされている1)。BPはハイドロキシアパタイトに対して高い親和性を有し,血中に入ると骨に選択的に取り込まれて骨表面に分布する。破骨細胞が骨表面に酸やコラーゲン分解酵素を分泌し,断片を取り込む際にBPも一緒に取り込まれ,破骨細胞のみが高濃度のBP作用を受ける。取り込まれたBPは破骨細胞のコレステロール代謝系のメバロン酸経路に働きかけ,破骨細胞の機能抑制,細胞死をもたらす。その結果,骨吸収が抑制され骨代謝回転が低下し,投与1年間で腰椎においては5~6%,大腿骨近位部では約2~3%の骨密度増加をもたらす1)。しかし一方で,過剰な骨代謝回転の抑制や骨質の劣化を招き,非定型骨折やBP系薬剤関連顎骨壊死などの副作用を生じることがある。 非定型骨折は2005年のObvinaら2)の報告以来,多数報告されており,BP製剤の使用により骨代謝回転の低下,コラーゲン架橋の変化・マイクロクラックの蓄積・石灰化の増加などが起こることが原因とされている。特に骨代謝回転の過剰抑制はseverly suppressed bone turnoverと呼ばれ,骨折を起こす大きな原因とされている。わが国では2010年の1年間に非定型大腿骨骨折が398例(大腿骨近位部骨折の約0.5%)あり,BP投与例が30%を占めた3)。 非定型骨折は骨盤や大腿骨などの比較的皮質の豊富な骨に起こり,特徴としては軽微な外傷が契機になる, 外側皮質の単純な横骨折, 骨折部内側がスパイク状, 外側骨(図5) 現在の骨盤、大腿骨のX線像    骨盤骨折の遷延治癒(矢印)、大腿骨の内反変形と外側皮質の肥厚(矢尻)を認める。

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