南予医学雑誌 第14巻
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渡森、他:骨粗鬆症の非定型骨盤骨折例南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-73-(図2) 骨盤MRI像    左恥骨に骨折を認める(図2)きたが,誘因なく新たに右殿部痛,右大腿後面に放散痛が出現した。 X線,CTにて右腸骨及び右恥骨骨折を認めた(図3)。 アレンドロネート長期内服中に誘因なく恥骨及び腸骨骨折を認めたため,非定型骨折の可能性を考え,アレンドロネート内服を中止し腰部のベルト固定をおこなった。テリパラチドの投与は毎日の自己注射が困難とのことで行わなかった。 また骨代謝マーカー測定では,骨代謝の明らかな低下は認めなかった。その後,新たに仙骨左側にも骨折を認めた。 アレンドロネート中止2か月の時点で恥骨や腸骨の骨折部は一部に仮骨形成がみられるのみで,遷延治癒を起こしていると考えられた。 非定型骨折遷延治癒の可能性が強く疑われたため確定診断目的にトレフィンバイオプシーを施行した。HE染色で菲薄化した皮質骨や骨梁,脂肪髄化を認めた。またハバース管の拡大も認め,骨粗鬆症の所見と考えられた。 更に,皮質骨にマイクロクラックを疑わせる裂隙を認めた。 一部に核を失った骨細胞の変性と考えられる所見も認め,骨代謝回転の低下が原因と考えられた(図4)。くる病など他疾患の所見は認めなかった。 アレンドロネート中止後6か月で骨盤の骨折部の治癒は遷延しているが,疼痛は軽減している。両側の大腿骨のレントゲン像(図5)では外側皮質の肥厚を認め,microfractureを繰り返しているものと考えられた。今後,大腿骨骨幹部の骨折にも注意が必要であると考える。考 察 骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインにおいて,BPは薬物治療におけるグレードT1像T2像

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