南予医学雑誌 第14巻
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大蔵:血清シスタチンC測定の有用性南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-5-受けることが示唆された。心血管病とシスタチンC 急性冠症候群(ACS)患者において,腎機能は独立した予後予測因子である。これまで,この腎機能の指標として血清Crが利用されてきたが,Jernbergらは,より高感度に糸球体ろ過値を表しうるシスタチンCでその予後との関連を検討した11)。対象はST上昇を認めないACSが疑われる症状を有した726人の入院患者である。死亡に関しては40ヶ月,心筋梗塞の発症に関しては6ヶ月経過観察を行った。シスタチンC濃度の平均値は,1.00㎎/lで,その濃度により<0.83,0.83-0.99,1.00-1.24,および≧1.25㎎/lの4群に分類すると,経過観察期間中死亡のリスクはシスタチンC濃度が高いほど増加した。そしてシスタチンCは,死亡の独立した予測因子であった。また,心筋梗塞の発症もシスタチンCの増加とともに増加したが,独立した予測因子ではなかった。 Shlipakらは65歳以上の高齢者4,637人を対象として,平均7.4年間の観察を行い,死亡および心血管病の発症とシスタチンCおよびCrとの関連を検討した12)。図4に示すようにシスタチンC,CrおよびCrから推定したGFRによって症例を5群に分類した(5群目に関してはさらに3群に分けた)。全死亡の頻度はシスタチンCで分類した場合,シスタチンCが高ければ高いほど増加した。これに対してCrおよびCrをもとに推定したGFRで分類した群では,シスタチンCのような直線的な関係は認められず,Jカーブの関連が認められた (図4)。このことからシスタチンCは高齢者において死亡の独立した予測因子であることが示された。 Shlipakらはさらに,これらの対象からGFRが正常な高齢者を抽出し,同様の検討(図4) 高齢者においてシスタチンC濃度は死亡予測因子である141210864201234567シスタチンC推定GFR(/年)全死亡率(%)図4高齢者においてシスタチンC濃度は死亡予測因子であるクレアチニン文献12)より引用

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