南予医学雑誌 第14巻
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南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-60-ら起こることもあるので注意が必要であると思われた。症例1では造影CTで左乳腺の結節に気づくことができた。胃生検で,signet-ring cellが検出された場合,乳腺浸潤性小葉癌の転移である可能性を考えておくべきと思われた。 4型胃癌と乳癌の胃転移の鑑別は胃透視検査や内視鏡検査だけでは困難である。病理学的な鑑別には免疫染色が有用であるとされており,ホルモン受容体であるER,PgRに加えて,アポクリン上皮のマーカーであるGCDFP-15が用いられている2)。GCDFP-15の乳癌での陽性率は47-72%程度であり,有用とされている9)。今回の3症例でも全て陽性であった。4型胃癌やsignet-ring cellが見られた時には,乳癌の転移の可能性も考え,慎重に全身検索を行うことが大切であると思われた。結   語 今回我々は,乳癌の胃転移を3例経験したので報告した。参考文献1)  原岡誠司,岩下明憲,中山吉福:病理から見た消化管転移性腫瘍.胃と腸2003;38:1755-1771.2)  小林達則,香川哲也,上山聰,他:胃転移を来した乳腺浸潤性小葉癌の1例-本邦で報告された乳癌胃転移132例の検討-.手術2012;66:1509-1514.3)  芥川篤史,森浦滋明,秋田幸彦,他:胃転移を来した乳癌の1例. 日臨外会誌1998;59:2808-2812.4)  星野敏彦,榎本和夫,岩崎好太郎,他:乳癌胃転移の1例.日臨外会誌2007;68:3015-3018.5)  江本節,吉川澄,藤川正博,他:幽門狭窄症状で発症した乳癌胃転移の1例.日臨外会誌2001;62:2909-2912.6)  中島弘樹,助川晋作,岩城孝和,他:術後に胃転移した乳腺浸潤性小葉癌の2例.日臨外会誌2012;73:39-42.7)  喜納政哉,秦庸壮,田口和典,他:胃・卵巣転移を伴った乳腺浸潤性小葉癌の1例.日臨外会誌2002;63:324-328.8)  岩田輝男,森田勝,仲田庄志,他:広範な消化管転移を認めた乳腺浸潤性小葉癌の1例.日消外会誌2005;38:1357-1362.9)  大西新介,高橋將人,田口和典,他:免疫組織学的検討からみた乳腺アポクリン癌の特徴.日臨外会誌2005;66:2899-2903

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