南予医学雑誌 第14巻
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上野、他:乳癌胃転移の3例南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-55- 入院時身体所見:身長149㎝,体重39.5㎏。腹部膨満を認めた。 入院時血液検査所見:RBC 385万/μl,Hb 9.8g/dlと貧血があった。腫瘍マーカーはCEA 62.2ng/mlと上昇していた。 胸腹部造影CT検査所見(図1):胃壁は肥厚していた。大量の腹水があり,両側卵巣の腫大を認めた。左乳腺に造影効果のある結節を認めた。 胃透視検査所見(図2):胃体上部から前庭部にかけて壁の伸展が不良で,粘膜の肥厚,硬化,けばだちを認めた。 上部消化管内視鏡検査所見(図3):胃前庭部を除いて胃壁の伸展は不良で,胃体部ではひだが消失し,境界が不明瞭な褪色調のびらんや発赤を認めた。  胃粘膜生検病理結果(図4):胃粘膜固有層に明るい胞体を持つ中型の異型細胞が弧在性,索状,胞巣状に増殖し,signet-ring cellに類似した形態の異型細胞を認めた。免疫染色ではCK7陽性,CK20陰性,ER陽性,PgR陽性,GCDFP-15弱陽性,E-cadherin陰性で乳腺浸潤性小葉癌の胃転移と診断された。 乳腺針生検病理結果(図5):異型細胞が弧在性,索状,胞巣状に配列して増殖し,脂肪織まで浸潤していた。Signet-ring cell類似の細胞も見られた。形態からは乳腺浸潤性小葉癌と診断された。免疫染色ではCK7陽性,CK20陰性,ER陽性,PgR弱陽性,GCDFP-15弱陽性,E-cadherin陰性であった。 経 過:パクリタキセルによる化学療法を5コース行ったが腹水が増加したため,ベバシズマブを併用してさらに化学療法を2コース行った。腹水のコントロールが可能となったためタモキシフェンに変更したがProgressive Disease(以下,PD)となっ(図1) 胸腹部造影CT検査所見(症例1) 左乳腺に造影効果のある結節を認めた(赤矢印)。腹水が大量に貯留し、胃壁は肥厚していた(黄矢印)。卵巣も腫大を認めた(青矢印)。図1

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