南予医学雑誌 第14巻
52/114

南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-50-考  察 LPL欠損症において急性膵炎の予防のためには,脂質の摂取を20 g/日以下あるいは総エネルギーの15 %以下まで制限すると効果的とされている2)。患者はLPL欠損症と診断されてから, 内服治療と食事の脂質量を25 g/日以下に減らすことでTGは改善傾向であった。現在も摂取栄養量に対する脂肪エネルギー比は総エネルギーの15 %以下で経過している。TGは1000 ㎎/dL以下で推移していたが, 食事療法のコンプライアンスが悪化すると上昇が見られた(図3)。入院中の食事管理では必要エネルギーを充足するために, 糖質から得るエネルギーが主体となることから, 血糖値上昇を予防するためにパラチノースを配合した治療用特殊食品を採用した。また, 脂質の質も考慮し中鎖脂肪酸を使用した治療用特殊食品も提供した。中鎖脂肪酸は小腸で吸収された後TGには取り込まれることはなく, 門脈を経て直接肝臓に運ばれ代謝される脂肪酸である。他の脂肪酸に比べてエネルギーになりやすいため, LPL欠損症の治療に効果的とされる3)。退院後も特別な食事療法の負担を軽減するために前述の治療用特殊食品を患者が購入し,普段の食事に摂り入れた。その他にLPL欠損症の治療方法として, 遺伝子治療も開発されてきており今度の展望に期待が高まっている4)。終りに 平成23年度国民健康・栄養調査では本症例と同年代の60~69歳女性において平均タンパク質摂取量は66.4 g/日,平均脂質摂取量は47.6 g/日という報告がある。本症例患者はLPL欠損症と慢性腎不全を合併しているため,タンパク質を40 g/日,脂質を25 g/日に制限する必要があった。これは前記の平均摂取量と比較すると厳し(図2)指導媒体と使用した治療用特殊食品

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る