南予医学雑誌 第14巻
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大蔵:血清シスタチンC測定の有用性南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-3-W:21,000)を測定し,51Cr-EDTA法により測定した糸球体ろ過値と比較した。糸球体ろ過値との相関係数は,それぞれ0.75,0.70,0.73および0.39であり,シスタチンCが最も良好であった。またシスタチンC濃度は年齢,性別,原疾患で影響を受けなかった。以上の結果から,検討した低分子蛋白の中でシスタチンCが最も糸球体ろ過値を忠実に表す指標であることを報告した。この後多くのCKD患者における血中シスタチンC測定の有用性が報告されている。シスタチンCと推算GFR 我が国でもシスタチンCの測定が保険適応となり,3か月に一回測定が可能になった。また,我が国における血清Crを基にした推算GFRの計算式がCKD治療ガイド2009で報告され6),さらにCKDガイド2012では血清シスタチンCに基づく推算GFRの計算式も報告された7)。血清シスタチンCに基づくGFR推算式の正確度は血清Crに基づく推算式と同程度であるが,筋肉量が少ない,もしくは多いなどCrの推算式では評価が困難な場合に有用である。また,この両者の推算式の平均値を用いると推定GFRの正確度は高まるので,より正確な推算GFRが必要な場合にシスタチンCとCrを算出することは有用である。急性腎障害(AKI)とシスタチンC AKIは早期診断・早期治療により,その悪化を予防し,予後を改善させることが出来る。AKI時,血清Crに変化を認めない段階でも,糸球体ろ過値はかなり低下している場合が多く,糸球体ろ過値をCr値で評価すると腎障害度を過小評価してしまう。そこでZhangらはメタ解析を行い,シスタチンCがAKIの早期の指標になるかを検討した。その結果,シスタチンC値が0.96㎎/Lをカットオフ値として,AKIの診断における感度0.84,特異度0.82とその有用性を報告している8)。高齢者におけるシスタチンC 成人では年齢とともに,糸球体ろ過値は低下してくる。老年者では筋肉量の低下によりCrの産生が低下するため,Cr値が正確に糸球体ろ過値を表すことが出来ない。そこでFliserらは,老年者におけるシスタチンCの有用性を検討した9)。平均年齢25歳の若年者,平均年齢67歳の老年者でイヌリンクリアランスを糸球体ろ過値の指標として,CrおよびシスタチンCの測定を行った。糸球体ろ過値は若年者119/ml/min/1.73㎡で老年者104/ml/min/1.73㎡と老年者で有意に低値であった。血清Crは両群間で差を認めなかった(0.93±0.11㎎/dl vs0.93±0.10㎎/dl)。一方血中シスタチンCは,若年者(0.69±0.08㎎/l)に比べ,老年者で有意に高値であった(0.84±0.10㎎/l)。したがって,血清Crが正常な老年者でも,血中シスタチンCは糸球体ろ過値を反映する良い指標であった。血中シスタチンCと高血圧 私たちは,60人の高血圧患者を対象として血中シスタチンCの測定を行った10)。血清シスタチンCは,Crクリアランスと良好な相関を示した(図2)。尿中アルブミン排泄量(AER)とも弱いながら相関が認められた(r=0.260, p=0.0446)。高血圧性臓器障害との関連では,左室心筋重量係数 (図3a),および頚動脈の内膜中膜厚

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