南予医学雑誌 第14巻
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渡辺、他:ワセリンによる陰茎異物南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-41-症  例 症 例 33歳,男性 主 訴 陰茎腫大,性交困難 既往歴・家族歴 特記事項なし 現病歴 約6年前に熱して液状にした市販のワセリンを陰茎包皮に自己注射した。陰茎包皮の浮腫の程度は変わりないが,勃起時の陰茎腫大による性交困難のため2013年1月当科を受診した。 入院時現症 身長 166.6㎝,体重 61.5㎏, 血圧134/70mmHg,脈拍 72/分。 陰茎包皮は根部から末梢まで棍棒状に腫脹し,亀頭部が包茎様に埋没していた(図1)。排尿障害は認めなかった。 皮疹,筋力低下,関節痛,発熱などの膠原病類似症状を認めなかった。 入院時検査所見 入院時尿検査:尿蛋白(-),尿潜血(-),尿白血球(-),尿沈渣:RBC 0.2 / HPF, WBC 0.4 / HPF。血液一般検査・生化学検査:異常を認めなかった。 CRP 0.03 ㎎/㎗, 抗核抗体(-),RF値(-),抗DNA抗体(-),抗Jo-1抗体(-),抗SS-A/SS-B抗体(-) 手術所見 ワセリン自己注入により発症した陰茎異物肉芽腫の診断で,腰椎麻酔下に亀頭部周囲の包皮浮腫部分の環状切除術を施行した(図2)。皮下の腫瘤は肉眼的に黄色の固い組織で,一部白膜に達していた。腫瘤は剥離が困難であったため,亀頭周囲の包皮のみ可及的に鋭的に環状切除した。過度の皮下組織切除により皮膚壊死をきたし,皮膚移植を要した例も報告1)されており,陰茎根部包皮下の組織の除去は行わなかった。埋没縫合で陰茎形成した。切除した包皮を(図3)に示す。(図1) 術前の外陰部所見陰茎包皮は根部から末梢まで棍棒状に腫脹し、亀頭部が包茎様に埋没していた。

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