南予医学雑誌 第14巻
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南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-40- ワセリンによる陰茎異物の1例 渡 辺 隆 太1),稲 田 浩 二1),山 下 与企彦1), 岡   明 博1),松 影 昭 一2),中 西   護2) 1)市立宇和島病院 泌尿器科 2)市立宇和島病院 臨床検査科受稿日 平成25年3月11日受理日 平成25年7月1日連絡先 〒798-8510 愛媛県宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院 泌尿器科 渡辺 隆太緒 言 陰茎増大,性感増強などを目的として,ワセリン,パラフィン,シリコン等の異物注入は以前から行われており,その注入による機能障害や合併症も報告されている。皮膚障害やヒトアジュバント病の発生により,現在では医療機関で同様の処置は行われていないが,非医療機関や自己判断で異物の注入が行われている。 今回我々は,陰茎部にワセリンを自己注入した後,性交困難となり外科的加療を要した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。要   旨 症例は、33歳男性。約6年前に熱して液状にした市販のワセリンを陰茎包皮に自己注射した。勃起時の陰茎腫大による性交困難のため2013年1月当科を受診した。初診時、陰茎包皮は根部から末梢まで棍棒状に腫脹し、亀頭部が包茎様に埋没していた。腰椎麻酔下に亀頭部周囲の包皮浮腫部分の環状切除術を施行した。病理組織学的検査では、泡沫様の胞体を有する組織球の増生とリンパ球の浸潤を示した。異物が入っていたとみられる空胞状構造を囲む組織球も存在し、ワセリン注入後の異物反応とみられる所見であった。術後性交可能となり患者の満足の得られる状態への改善が得られた。ヒトアジュバント病のような重篤な合併症も報告されていることから、社会的に危険性を啓蒙する必要がある。 (南予医誌 2013;14:40-46.)Key Words:ワセリン,陰茎異物,ヒトアジュバント病

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