南予医学雑誌 第14巻
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南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-32-の施設では6年5ヶ月間に2例の小児化膿性仙腸関節炎を経験したが,初回のMRI検査時に1例は化膿性股関節炎が疑われ股関節を中心に撮影されたため,またもう1例は脊髄病変が疑われ腰椎を中心に撮影されたため,2例とも仙腸関節が十分に撮影範囲に含まれておらず診断に時間を要した。発熱および股関節周囲痛を認め,化膿性関節炎を疑いMRIを施行する際には,仙腸関節炎も考慮し仙腸関節を含めて撮像するべきである。【症例1】 症 例:14歳 女児 主 訴: 発熱 歩行困難     右臀部から股関節周囲の疼痛 現病歴:2005年4月某日から右股関節痛および発熱を認め発症4日目に近医小児科を受診し,血液検査で炎症反応の高値を指摘され近医整形外科を紹介された。レントゲンおよびMRIを施行されたが明らかな異常所見は認めず経過観察された。その後も39℃までの発熱が続き,右股関節痛のため歩行困難となったため発症5日目に当科を受診した。血液検査ではCRP 5.63㎎/㎗と高値である以外は特記すべき所見は認められなかった。股関節MRIにおいては,股関節周囲の異常信号は見られず(図1:脂肪抑制像で軽度の仙腸関節周囲の高信号域を認めていたが,撮影範囲には一部しか入っておらずこの時点では感染巣としては断定されなかった),初期の化膿性股関節炎もしくは単純性股関節炎と診断され入院となり,FMOXの投与にて症状は改善したため,FMOX計7日間の投与終了後に一旦退院となった。入院時の血液培養からは原因菌は特定されなかった。 退院後は一時期通学もしていたが発症18日目頃から再び発熱および右股関節周囲から大腿にかけての疼痛が見られだしたため発症22日目に当科を再診した。 入院時現症:体温:38.0℃,咽頭・扁桃:(図1) 症例1 発症5日目 股関節MRI(脂肪抑制像)左仙腸関節(矢印)に輝度変化は確認できない。図1症例1発症5日目股関節MRI(脂肪抑制像)

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