南予医学雑誌 第14巻
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南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-31- 診断に苦慮した小児化膿性仙腸関節炎の2例 元 木 崇 裕,西 村 幸 士,高 島 健 浩,山 岡 理 恵, 菊 池 知 耶,長 谷 幸 治,中 野 威 史,林   正 俊 市立宇和島病院 小児科 渡 森 一 光,鶴 岡 裕 昭 市立宇和島病院 整形外科受稿日 平成25年2月8日受理日 平成25年8月26日連絡先 〒798-8510 愛媛県宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院 小児科 長谷 幸治はじめに 仙腸関節は体幹の荷重を下肢に伝達する機能を持つ滑膜関節で,前仙腸靱帯と後方の強靭な骨間仙腸靱帯,後仙腸靱帯で構成されている1)。仙腸関節は可動関節であるが,他の関節と比較して面積は広いが可動域が少なく体表から触知することが困難なため,仙腸関節由来の疼痛の診断は困難である。仙腸関節炎は小児の化膿性関節炎のなかでもまれな疾患であり,診断に難渋することが多いが2),近年はMRI,特に脂肪抑制像や造影MRIにて早期診断が可能であった例が報告されている3-7)。今回我々要   旨 2005年~2010年までの6年間で小児の化膿性仙腸関節炎を2例経験した。2例とも発熱、片側の臀部から股関節の疼痛、歩行障害などの共通した症状が見られており、症状発現から診断確定までに約3週間を要していた。小児化膿性仙腸関節炎はまれな疾患であり、臨床症状が強い割には特異的な理学的所見に乏しく診断が困難な場合が多い。診断にはMRI、特に脂肪抑制像が有用であるが、2例とも初回のMRI検査では撮影範囲に仙腸関節が含まれておらず診断に時間を要した。発熱および片側性の臀部痛を認め、化膿性関節炎を疑いMRIを施行する際には、仙腸関節炎も考慮し仙腸関節も含めて撮像すべきである。 (南予医誌 2013;14:31-39.)Key Words:化膿性仙腸関節炎,小児,臀部痛,MRI,脂肪抑制像

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