南予医学雑誌 第14巻
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南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-1-   総   説 血清シスタチンC測定の有用性 大 蔵 隆 文 愛媛大学大学院循環器・呼吸器・腎高血圧内科学 (南予医誌 2013;14:1-8.)受稿日 平成25年5月29日受理日 平成25年7月19日連絡先 〒791-0295 愛媛県東温市志津川 愛媛大学大学院 循環器・呼吸器・腎高血圧内科学 大蔵 隆文はじめに シスタチンCは,13キロダルトンの内因性システインプロテネース阻害物質の一つであり,全身の有核細胞から産生され,システインプロテネースによる細胞障害を抑制している。シスタチンCは筋肉量,食事,運動などの影響を受けにくく,一定の割合で産生され,分子量が小さいため,腎糸球体ですべてろ過された後,近位尿細管で再吸収され,そこで分解される(図1)。したがってその血中濃度は,糸球体ろ過値に依存している。さらに,血清クレアチニン(Cr)と比較して,腎障害の早期から変化が認められるため,早期腎障害診断マーカーとも考えられる。そして最近では,腎機能の指標としてだけでなく,心不全や心血管病による死亡の予測因子としても注目されている。シスタチンCの生化学 システインプロテネースは,植物,細菌,ウイルス,原生動物や哺乳類で普遍的に認められる蛋白分解酵素の一つである。哺乳類において,システインプロテネースはライソゾーム内に認められ,Ⅰ型コラーゲンの分解や前駆体蛋白の分解・活性化などに関与している。システインプロテネース活性が異常に亢進すると蛋白分解が増し,重篤な障害を細胞に与える。臨床的には関節炎,癌細胞浸潤,転移,感染症など多くの変性疾患においてこれらの蛋白分解酵素が関与している。そしてこれらの蛋白分解酵素には,それぞれこれらの活性を調整している阻害酵素が存在する。システインプロテネース阻害物質は,酵素反応の最終段階をコントロールする物質である1)。シスタチンCは,シスタチンスーパーファミリーに属し,パパインや他のライソゾーム蛋白分解酵素の阻害物質である。シスタチンCは,比較的高濃度で体液中に存在し,特に精液,脳脊髄液,滑膜液中に多く認められる2,3)。シスタチンCは,分子量が小さく,

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