南予医学雑誌 第14巻
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南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-24-  比較的高齢で発症した伝染性単核球症にバセドウ病を 合併した1例 江 口   透,宮 内 省 蔵 市立宇和島病院 内科受稿日 平成25年1月23日受理日 平成25年7月24日連絡先 〒798-8510 愛媛県宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院 内科 江口  透はじめに バセドウ病は自己免疫性甲状腺疾患であるが, 発症因子に関しては, 遺伝的, 環境的要因に加えて, ウイルスを含めた感染症の関与が示唆されている。今回我々は, 比較的高齢でEB virusによる伝染性単核球症(IM)を発症し, バセドウ病の合併を認めた1例を経験したので報告する。 【症 例】53歳女性  【主 訴】発熱, 咽頭痛  【既往歴】内分泌疾患を含めて特記事項なし  【家族歴】内分泌疾患を含めて特記事項なし要   旨 症例は53才女性。2011年6月より38度台の発熱, 咽頭痛を認め, 精査加療目的で入院となった。TSH < 0.01 μIU/mL, FT3 7.55 pg/mL, FT4 2.91 ng/dL, TRAb 6.2 IU/mL, AST 260 U/L, ALT 277 U/L, EB VCA-IgM ×80, EB VCA-IgG ×160, EB EBNA <×10。頚部エコーで甲状腺のびまん性腫大, 99m Tcシンチグラフィで甲状腺全体にuptake増加あり, バセドウ病と診断した。肝機能障害を認め, ヨウ化カリウム(KI) 100 mg/日から開始した。入院から2週間後, TSH < 0.01 μIU/mL, FT3 2.72 pg/mL, FT4 1.13 ng/dL, AST 54 U/L, ALT 90 U/Lと改善傾向で, KI中止, チアマゾール(MMI) 20 ㎎/日の内服に変更した。 バセドウ病発症にEB virus感染が関与することを示唆する貴重な症例と考えられた。 (南予医誌 2013;14:24-30.)Key Words:伝染性単核球症, バセドウ病, EB virus   原   著

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