南予医学雑誌 第14巻
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今井、他:2孔式腹腔鏡下右側結腸切除術南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-21-概ね良好な短期成績が報告されているが,十分な視野展開や鉗子操作の制限は避けられず,癌に対する手術自体の安全性や根治性が損なわれる恐れもあり,安全性の担保やリンパ節郭清の精度を考慮するとTANKOの悪性疾患への導入は慎重であるべきと考える。 上記を踏まえ,当科では臍部の単一創にはこだわらず,術後のドレーン留置を前提としてプラス1ポートを追加し,より安全に,より精緻に手術手技を完遂できるようTANKO+1のRPS:2孔式腹腔鏡下結腸切除術を行った。本手技は術者の左手で独立したポートを使用することで従来の腹腔鏡下手術とほぼ遜色のない鉗子操作となり,剥離や郭清手技に関しても安全に施行可能であった。郭清操作を伴わない良性疾患に対する手技ではあまりストレスを感じることなく手術遂行が可能であり,若年者や女性等の整容性に重きをおく患者への導入は魅力的なオプションになると思われる。一方,大腸癌症例に対しては,当科では早期癌に対してもsurgical trunk郭清を併施するD3結腸切除を施行しており,血管根部へのアプローチを伴う慎重な剥離操作に時間を要し,従来の腹腔鏡下手術と比較し手術時間が延長する傾向にある。しかし出血量や郭清リンパ節個数は遜色のないことが確認され,術後在院日数,合併症などの明らかな増加もなく,従来の腹腔鏡下手術に劣ることのない手技であると思われる。 また,当科では特殊なアクセスデバイスや屈曲鉗子を使用せず従来の手術器具を用いたグローブ法を採用し,コスト削減に努めている。通常,新しい手技の導入は医療コスト増が必至であるが,手術用手袋を使用したグローブ法は非常に安価7)と報告されており,一般市中病院でのTANKOやRPSの導入には有用と思われる。 現在,日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)により国内初の進行大腸癌に対する腹腔鏡下手術と開腹手術の根治性に関する比較試験の解析が進む中,将来,腹腔鏡下大腸切除術が開腹手術に代わり標準治療になると予想されている。TANKOやRPSはまだ改良の余地の残る手術手技ではあるが確実に症例数が増加しており,それだけ患者からのニーズがあることも事実である。更なる症例の蓄積,検討がなされ,癌治療においても根治性を損なわずより安全に施行可能な手技として確立されれば,本稿で示した2孔式腹腔鏡下右側結腸切除術は有用な選択肢の一つとなりうると思われる。ま と め 右側結腸疾患に対する2孔式腹腔鏡下結腸切除術は,安全に施行可能であった。郭清手技に関しても遜色無く,良性疾患や早期大腸癌への導入は十分可能と思われた。今後,更なる安定した手技へと発展させていくために,症例の蓄積検討が待たれるところである。参考文献1)  Jayne DG, Guillou PJ, Thorpe H, et al. : Randomized trial of laparoscopic-assisted resection of colorectal carci-noma: 3-year results of the UK MRC CLASICC Trial Group.J Clin Oncol 2007; 25:3061-3068.2)  Fleshman J, Sargent DJ, Green E,et al. : Laparoscopic colectomy for cancer is not inferior to open surgery

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