南予医学雑誌 第14巻
22/114

南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-20-ていると思われ,海外の報告では3年生存率,5年生存率,再発率いずれも腹腔鏡下手術と開腹手術において差がなかったと報告1),2)されている。日本でも進行癌を含む多くの症例に腹腔鏡下手術が導入されており,ほぼ成熟期に達したと思われる腹腔鏡下大腸切除術であるが,一方で,創をより小さく・少なくし,手術侵襲をさらに低減する試みは常に模索されている。1997年にはNavarraらにより単孔式腹腔鏡手術としてはじめての報告がなされ,臍切開による2 port +3 stay sutureで行った胆嚢摘出術が紹介された3)が,手技が煩雑で普及にはいたらなかった。その後,2007年,米国Drexel大学のグループが臍部縦切開による腹腔鏡下胆嚢摘出術が可能であったと報告し,専用デバイスの開発と相まって単孔式内視鏡外科手術が急速に普及していった。その後,婦人科や泌尿器科疾患を含む様々な疾患への導入が試みられ,内視鏡外科手術が次のステージへ更なる進化を遂げる,まさにそんな時代が来たような思いがする。 しかし,いくつかの問題点も存在する。従来の腹腔鏡下手術と比較すると,内視鏡を含むすべての手術器具が臍部より挿入されており,鉗子同士や鉗子と内視鏡との干渉が避けられず極めて窮屈な手術となる。それらの問題を解決するため屈曲鉗子や臍から腹腔内へのアクセスデバイスも専用で特殊なものが開発されてきたが,その手技は明らかに煩雑で難易度が高くなる。さらに,開腹に伴う腹壁破壊は極めて少なくとも,手術操作に伴う剥離範囲は従来の腹腔鏡手術とかわらず,低侵襲性には否定的な見解が多く,整容性以外に臨床的なメリットが見いだせないのも事実である。大腸癌に対しTANKOを導入した報告も散見され4),5),6),年齢性別BMI診断術式手術時間(分)出血量(ml)在院日数リンパ節個数飲水(開始日)食事(開始日)合併症深達度135女23.7憩室症右結腸切除16907 23279女16.1横行結腸癌右半結腸切除28136160/1623麻痺性イレウスm小腸部分切除383男20上行結腸癌回盲部切除16330130/1623m464女25.7憩室症右結腸切除21820810 23573男20.6憩室症右半結腸切除151188 23664女22.3上行結腸癌右半結腸切除2539130/3323mp平均66.421.4205.850.111.221.723(表1) 2孔式腹腔鏡下右側結腸切除術症例

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る