南予医学雑誌 第14巻
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南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-14-自己管理において単に便利品を使用すれば良いというわけではなく,間違えないように工夫する事や,その行動の質が重要と考える。 今回の実態調査では,同時に知的機能検査を実施した。長谷川式スケールで認知機能低下ありとされる20点以下の患者,17名中11名が飲み忘れなく自己管理できていた。田中ら3)は,「知的機能の低下は飲み忘れの要因」と述べており,我々も認知機能低下のある人は,飲み忘れが確実に多くなると予想していたが,結果は必ずしもそうではなかった。これは,鎌田ら4)が「高齢者は新しい事は記憶するのは苦手であっても,昔会得している知識(記憶)は保護されている」と述べているように,以前から服用していた薬の場合,習慣化され,自己管理できているからではないかと考えられる。今回,長谷川式スケールが低くても自己管理が可能な場合があることがわかったことから,認知機能が低くてもはじめから自己管理は無理だと判断せず,充分なアセスメントを行うべきと思われる。Ⅵ.結  論 高齢者の自宅での内服自己管理状況は1 .薬袋のまま管理し,1回分ずつ服用時準備している人が多かった。2 .市販のケースだけを使用している人に有意に飲み忘れが多かった。3 .長谷川式スケール20点以下の認知機能低下者に必ずしも飲み忘れが多いという傾向はなかった。Ⅵ.おわりに 今回の調査は質問用紙に示した項目のみの聞き取り調査であり,服薬遵守の確認をどのように行っているかというところまでは把握できていない。すなわち,飲み忘れがない人の中に飲み忘れたことに気付いていない人も含まれている可能性がある。 今後は,飲み忘れがない内服自己管理者から飲み忘れないための工夫・意識付けに関しての情報を得て,他の患者へ指導・アドバイスができるように努めていきたい。参考文献1)  田辺加奈子,須具真由美,加藤愛:内服自己管理における実態を知る.日本農村医学会雑誌 2007;56(3):301.2)  井上勝也,大川一郎,編:高齢者の「こころ」事典.中央法規出版,東京, 2000:pp20~21.3)  田中瑛子,山本公子,原田祥恵,他:高齢者の内服管理に関する実態調査.日本看護学会抄録集・成人看護2 2009;140:148.4)  鎌田ケイ子,川原礼子,編 老年看護概論・老年保健.メジカルフレンド社,東京, 2003:P34.

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