南予医学雑誌 第14巻
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酒井、他:高齢者の内服自己管理調査南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-13-分ずつ準備31名・数日間分ずつ準備16名に飲み忘れがあった。長谷川式スケールに関しては,21点以上41名・20点以下6名に飲み忘れがあった(表1)。7 .飲み忘れの頻度は1~2回/週が最も多かった。飲み忘れの最も多い時間帯の薬は昼食後薬で,飲み忘れの多い理由は,「仕事が忙しかった」・「外出していた」であった。8 .表1に示した4項目の内容を評価した結果,保管方法において「市販ケースだけを使用している」場合の飲み忘れが有意に高かった。Ⅳ.考  察 高齢者の特徴として井上ら2)は,「他者から援助を受けることに対して必要以上に心理的負担を感じ,それがストレスとなる」と述べている。今回の調査ではほとんどの患者に同居者がいたが,内服を自己管理しているのは,他者からの援助に対する心理的負担や,同居者が高齢で依存できない事が考えられる。47名の患者に飲み忘れがあったが,頻度は1~2回/週と比較的軽度のものが多かった。 近年,薬ケース・薬カレンダーなどが市販され,それを紹介している施設もある。今回の調査でも半数の患者がその存在を知っていた。高齢者は複数の疾患を抱え多数の薬を服用していることが多い。さらに,視力低下,記憶力の低下などがみられるため,市販の薬ケースなどを使用することは,前もって準備でき,視覚的にも飲み忘れの予防につながるのではないかと考えていた。しかし実際は,半数が薬袋のまま保管しており,市販のケースを使用していても17名中14名に飲み忘れが見られ予想と逆方向の有意差が出た。ケースに振り込むときに間違えたり,違う場所から取り出していたのが原因であった。このことから,(表1) 服薬管理状況・知的機能検査結果と飲み忘れの関係①内服の包装一包化個別包装両 方  飲み忘れ無13名30名10名  飲み忘れ有16名・55%20名・40%11名・52%②保管方法薬 袋市販ケースその他  飲み忘れ無40名3名10名  飲み忘れ有26名・39%14名・82%※7名・41%③準備方法1回分数日間分  飲み忘れ無42名11名  飲み忘れ有31名・42%16名・59%④改訂長谷川式21点以上20点以下  飲み忘れ無42名11名  飲み忘れ有41名・49%6名・35%※;P=0.0058

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