南予医学雑誌 第14巻
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藤井:なんよだより南予医誌 Vol.14 No. 1 2013-101- つぎに,地下1階の食養科までわざわざ足を運んでくださり,お礼の言葉を伝えてくださったご家族のことを加えたい。その方は当院の元総婦長であり,医療人として直に言葉でお礼を伝えたかったというものであった。まず,旧病院に比較して設備や病院の体制について高い評価をしてくださった。食養科の対応についても,とてもきめ細やかな配慮が見られ,感動したということであった。つまり, 食事の美味しさ,食材の良さ,メニューの豊富さ,適確な温度管理,食事に添えたメッセージカードの配慮,食欲減退時の管理栄養士の対応の速さや的確な食事変更などを列挙され,患者様の食事摂取量が低下することなく退院につながり,家族としても喜ばしく,快適な入院生活と食事提供であったというものである。 このような数々の評価は入院患者や家族の医療に対する安心感を高め,「患者に寄り添う医療」の提供となり,ひいては病院の評判を高めることにつながっていくと考える。 病院の食事の良し悪しで患者様が入院する病院を選ぶことはないであろう。しかし,患者様の求めている医療の中には,安心安全な医療と自分に寄り添ってもらえる医療があり,病院食の質や美味しさが大きく関わっていると思う。 これからは多元的価値観が求められる時代でもある。メッセージカード添付の効果が私が考えていた以上のものであったことから,患者様が求めるものは何かについて,より深く洞察するようになった。 もちろん高度な医療,高い医療技術は求められるであろうが,専門知識の少ない患者様は自分が受けている医療レベルについては理解しづらいものである。やさしい接遇,声をかけやすいスタッフ,それに加えて,自分の置かれている環境に存在する「モノ」「コト」すべての説明とそれを納得し受け入れることで,多くの患者様はワンランク上の医療を求めているのだろうと感じている。そしてそれはそれほど難しくなく患者様に提供できるのではないであろうか。 今後は食事に限らず,病院全体で患者様や地域のことを思い,地域に還元できる「モノ」や「コト」を創造し,地域に落とし込んでいくことが重要である。そして,それこそが当院の理念である「地域に開かれた病院,地域になくてはならない病院」につながると考える。

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