南予医学雑誌 第13巻 第1号
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藤山:肝移植の現状南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-7-報告されている12)。また日本肝移植研究会によるドナー術後に関するアンケートでは,術前の状態に復帰するまで約半年の期間が必要と報告されており,様々な不定愁訴を自覚される方も多い。当院でのドナー術後合併症では,術後胆汁漏の頻度がやや高く解決すべき重要な問題であったが,肝門部胆管をHilar plateごと切離する術式の改善により著明に減少した。 生体部分肝移植では,レシピエントに必要なグラフト容量とドナーに残存する肝容積が問題となる。ドナーの安全性を考慮した場合,より大きな肝臓を残す必要があり,レシピエント体重比(GRWR)や標準肝容積比などが指標とされてきた。従来GRWR 0.8%(例:体重50kgの患者には400gのグラフト)が必要とされてきたが13),近年レシピエントの門脈圧を調整することでより小さなグラフトでも安全に手術が可能であるとの報告もある14)。ドナーの安全が最優先事項である生体部分肝移植においては,今後の研究の発展が望まれる分野である。6.レシピエント手術成績 日本肝移植研究会における2010年のレシピエント手術成績を示す(図4a)。胆道閉鎖症が多くを占める18才以下の小児症例においては80%以上の良好な手術成績を示す。一方18才以上の成人例では肝炎ウイルス関連肝硬変,肝細胞癌が約半数を占め,長期的治療成績は原疾患の再発などの問題もあり,約60%台と低下する傾向にある。また原発性硬化性胆管炎は生体部分肝移植において術後再発率が高く問題となっている15)。 愛媛大学におけるレシピエント治療成績を示す(図4b)。術後早期のグラフト不全が原因で1例を失ったが,小児の長期成績(表4)愛媛大学生体部分肝移植レシピエント、ドナープロフィール愛媛大学生体部分肝移植レシピエントドナプロフィルTable 4レシピエント、ドナープロフィールレシピエントレシピエント適応疾患症例数レシピエント小児9例(7ヶ月~14才)成人36例(35才~66才)性別:男性19人女性26人小児胆道閉鎖症6劇症肝炎2Wilson病1性別:男性19人、女性26人ドナー平均年齢:39才(20才~66才)Wilson病1成人B型肝硬変1B型肝硬変、肝細胞癌3平均年齢:39才(20才66才)性別:男性29人、女性18人両親9人祖父母2人C型肝硬変5C型肝硬変、肝細胞癌6祖父母2人配偶者11人兄弟8人子供16人アルコール性肝硬変3脂肪肝炎1原発性胆汁性肝硬変10原発性胆汁性肝硬変10胆道閉鎖症1劇症肝炎6計45

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