南予医学雑誌 第13巻 第1号
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南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-6-齢となると様々な基礎疾患を有していることがあり,糖尿病,高血圧,脂肪肝などの生活習慣病,また悪性腫瘍を除外することが必要である。これまでの愛媛大学における生体部分肝移植ドナーの平均年齢は39才,男性29名,女性18名であった。ドナーとレシピエントの関係では,小児の移植では両親のいずれかがドナーとなったものが9例,祖父母が2例であった。一方成人における生体部分肝移植のドナーは,配偶者が11名,兄弟姉妹が8名,子供が16名であった(表4)。ドナー脂肪肝はドナー手術の安全性,レシピエントの手術成績を考慮した場合重要な因子であり,術前のCT検査で肝/脾CT比が1.1以下で中等度以上の脂肪肝が疑われる場合11)は,肝生検にて脂肪肝炎を除外し術前の食事,運動療法などを行うことで対応している。またドナーを希望しながら乳癌,大腸癌,前立腺癌などが問題となり手術が困難であった事例もあり,高齢ドナーの場合の悪性疾患の除外は重要である。5.生体部分肝移植ドナーの問題点 脳死肝移植は,脳死ドナーがいつ出るか不明なため常に緊急手術対応となること,臓器摘出施設と移植施設が異なることより臓器搬送にかかる時間が問題となる。一方生体部分肝移植手術では,レシピエントの状態に応じて手術時期が選べること,ドナーとレシピエントが同じ施設において同時に手術を行うことより臓器搬送にかかる時間が問題とならないなどの利点がある。しかし健康な方から臓器を摘出するという大きな倫理的問題を含む。またドナーにかかる精神的負担は大きく,術後は胆汁漏をはじめとするいくつかの合併症が起こる危険性もある。 肝右葉グラフトを摘出した場合のCla-vien gradeⅢ以上の合併症発生率は17%と(表3)愛媛大学生体肝移植ドナーの条件愛媛大学生体肝移植ドナーの条件Table 3自発性•自発的意志間柄3親等以内の親族あるいは配偶者•3親等以内の親族あるいは配偶者•20才以上の成人(65才まで)•レシピエントと血液型が一致ないし適合が望ましい正常な肝臓•全身麻酔に際し禁忌となるような合併症を有しない•感染症悪性腫瘍がない•感染症、悪性腫瘍がない•脂肪肝がない(肝生検にて脂肪沈着した肝細胞が30%以下)•脂肪肝炎(NASH)は適応外•充分量の肝容積(腹部CTのVolumetryによって計測されるグラフトの容積がレシピエントの体重比あたり0.8%以上が望ましい)あたり0.8%以上が望ましい)

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