南予医学雑誌 第13巻 第1号
7/84

藤山:肝移植の現状南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-5-要とする(6-month rule)施設が多いが,急速な肝機能の悪化のため意思確認期間が不十分となることも多い。6-month rule以外の適応基準を提唱している施設もあるが,術前の確認はどのような方法をとっても明確ではない。アルコール依存から脱却するためには,専門プログラムの履修,家庭や仕事環境の整備や生活指導,病院スタッフや地域保健機関との連携を円滑に行う個別の取組が重要であると思われる5)。 肝移植の適応を検討する場合,肝移植の禁忌事項を除外することが重要である6)。原発性硬化性胆管炎に合併する胆管癌などの肝内悪性腫瘍,また成人患者に合併する可能性のある消化管悪性腫瘍,乳腺,泌尿器,婦人科領域の悪性疾患にも注意が必要である。早期の悪性腫瘍で完治が期待できれば移植手術は可能と判断されるが,どの程度の経過観察で移植が可能であるかに関する一定の基準はない。また肺炎など活動性の感染症を合併すると手術は困難であり,特に真菌感染症には注意が必要である。肝機能の悪化とともに進行する他臓器の障害も重要であり,肝腎症候群に伴う腎機能の低下7),肝肺症候群に伴う低酸素血症,肺高血圧症により移植が困難となることも多く8),他臓器障害が疑われた場合は速やかに専門医に相談する必要がある。3.移植時期 進行するChild B,およびChild C症例は非代償性肝硬変と判断される。成人の非代償性肝硬変においては,ビリルビン値,PT(INR)値,クレアチニン値,透析の有無から算出されるMELDスコア(Mayo clinicのホームページにて算出可能)が移植時期の判断に有用とされており,MELDスコアが15を超える場合は速やかに肝移植を考慮する必要がある9)。原発性胆汁性肝硬変では,Mayo clinic,日本肝移植適応研究会などから予後予測式が提唱されており参考となる。Mayo clinic のThe Updated Natural History Model for PBCでリスクスコアが7.8を超えた時点,また日本肝移植適応研究会の予後予測式で死亡確率が50%を超えた時点で移植適応と判断される。劇症肝炎の肝移植においては,従来第22回日本急性肝不全研究会の肝移植適応基準が参考とされてきたが,近年,血小板数と肝萎縮の有無を加えた新ガイドラインが提唱されている10)。愛媛県には愛媛大学先端病態内科学講座を中心とした愛媛肝炎ネットワーク(EKEN net;愛媛大学肝疾患相談センターホームページ参照))がある。愛媛大学の劇症肝炎の肝移植治療成績は非常に良好であるが,脳症発現前の重症肝炎の時期に連絡を受け入院治療を開始していることが一因であると考えている。 日本でも臓器移植法の改正により徐々に脳死下での臓器提供が進みつつあるが,現状では近親者から肝臓の一部の提供をうけ手術を行う生体部分肝移植が中心である。以下,生体部分肝移植の現状に関して述べる。4.生体部分肝移植におけるドナーの条件 生体移植ドナーの条件は,日本移植学会,日本肝移植研究会において明示されているが,愛媛大学においても上記条件に準じて行っている(表3)。ドナー選定においては,自発的意思の確認が非常に重要であり,当院では手術に関わらない精神科医師に確認を依頼している。またドナーが高

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です