南予医学雑誌 第13巻 第1号
40/84

南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-38-月においても左眼矯正視力は0.3であった。眼圧は10㎜Hg前後で安定していた。受傷後3ヶ月時点で計測した角膜内皮細胞数は460/㎟と著明に減少していた(右眼2777/㎟)(図4)。 その他の眼所見として,7時を中心とした虹彩に著明な萎縮・脱色素を認めるも,虹彩・隅角癒着はなく,明らかな白内障進行や眼底異常を認めなかった。【考 察】 蜂は黒い物を攻撃する習性があり,人体において角膜は被髪部とともに標的となりやすい部位である。角膜蜂刺傷は投与された蜂毒による眼組織障害といえるが,蜂毒には非常に多くの成分が含まれている。蜂毒の成分を大別すると,ホスホリパーゼA/B・プロテアーゼ・ヒアルロニダーゼ(組織分解),アパミン・マンダラトキシン(神経毒),メリチン(溶血毒)などの細胞・組織障害性物質と,ヒスタミン・セロトニン・マストパラン・ホーネットキニンなどのアレルギー誘発性物質に分けられるが,含有成分の種類や量は蜂の種類によって大きく異なる2~5)。過去の角膜蜂刺傷の報告より,アシナガバチやミツバチによるものは最終視力0.8以上と予後良好だが,スズメバチによるものでは最終視力0.2以下~失明と非常に重篤であり(表1),これはスズメバチの毒素が非常に強力であること,毒液の絶対量が多いこと,毒針が長く(オオスズメバチでは約7㎜)刺傷が深くまで及びやすいことなどが関与していると考えられる1~5)。 スズメバチによる角膜刺傷では高率に水疱性角膜症・白内障を来し,続発緑内障・図3:受傷後角膜実質浮腫範囲の変化2日8日14日2ヶ月角膜実質浮腫は受傷直後角膜全面に強く認められたが、刺傷部対側の1時方向より徐々に縮小し、受傷後2ヶ月には7時付近にわずかに認められるのみとなった。(図3)受傷後 角膜実質浮腫範囲の変化

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です