南予医学雑誌 第13巻 第1号
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南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-36- 家族歴:特記事項なし 現病歴: 2011年8月15日16時頃,農作業のため倉庫の戸を開けた際にスズメバチが出現し,左眼および左肘を刺され受傷した。後日蜂の標本写真を参照しながら確認し,モンスズメバチであった可能性が高いことを確認した。同日近医救急外来を受診し,洗眼およびデキサメタゾン(デカドロン®)1.65㎎,抗ヒスタミン薬の点滴加療を受けた。アナフィラキシーショックなどの全身症状は呈さなかったが,左眼視力低下・眼痛強く,翌日8月16日市立宇和島病院眼科を受診した。 初診時所見: 矯正視力は,右眼 0.6,左眼 眼前手動弁。眼圧は,右10㎜Hg,左21㎜Hg。左眼結膜に高度の充血・浮腫を認め,7時角膜輪部に限局的な強い実質混濁と角膜上皮欠損を,また角膜全面に及ぶ高度の実質浮腫を認めた(図1)。毒針の残存は認めず,針の刺入痕や刺入の深さは強い角膜浮腫混濁のため確認できなかったが,角膜混濁および上皮欠損の局在より,7時角膜輪部が刺傷部と推測された。前房内にはフィブリン形成を認め,対光反応は減弱していた。眼底は角膜浮腫,前房混濁の影響で透見不能だったが,超音波検査にて明らかな硝子体混濁,網膜剥離を認めなかった。非受傷眼である右眼は,核白内障以外の明らかな異常を認めなかった。 治 療: 初診当日に当科入院し,同日16時(受傷後24時間)局所麻酔下に前房洗浄を行った。同日より受傷後2週間までの間,局所投与として,デキサメタゾン(デカドロン®)1.65㎎/0.5㎖結膜下注射を,手術終了時を含め,隔日投与にて計8回施行し,ベタメタゾン(リンベタPF®)点眼1~2時間毎(平均10回/日),0.5%レボフロキサシン(クラビット®)点眼4回/日を行った。全身投与としては,メチルプレドニゾロン図1:初診時前眼部所見ABC図1:初診時前眼部所見A:7時角膜輪部実質混濁、および結膜充血・浮腫B:7時角膜上皮欠損C:角膜全面に及ぶ著明な実質浮腫、および前房内フィブリン形成(図1)初診時 前眼部所見

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