南予医学雑誌 第13巻 第1号
37/84

南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-35- スズメバチによる角膜刺傷の1例 大 熊 真 一1),岡 奈央子1),山 下 有 香1), 西 谷 元 宏1),内 藤 聡1),白 石 敦2) 1)市立宇和島病院 眼科 2)愛媛大学医学部 眼科学教室受稿日 平成24年8月15日受理日 平成24年8月16日連絡先 〒798-8510 愛媛県宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院 眼科 大熊 真一【序 言】 角膜蜂刺傷はまれな眼外傷だが,蜂の種類や刺傷の深さ等によりその視力予後は大きく左右される。蜂の種類では,スズメバチ,アシナガバチ,ミツバチによるものが報告されているが,スズメバチによるものは予後不良とされ,高率に水疱性角膜症を来し,失明に至る例も少なくない1~5)。今回我々は,受傷後早期の前房洗浄と頻回のステロイド結膜下注射および点眼治療を行い,比較的良好な視力維持が可能であったスズメバチによる角膜刺傷の1例を経験したので,過去の報告と比較しこれを報告する。【症 例】 患 者:77歳 男性 主 訴:左眼視力低下,眼痛 既往歴:両眼白内障(受傷前視力は両眼同程度),蜂刺傷歴なし要 旨 77歳男性,スズメバチに左眼角膜を刺され翌日当院を受診。初診時視力は眼前手動弁。7時角膜の実質混濁と上皮欠損,角膜全面に及ぶ強い実質浮腫,前房内フィブリンを認めた。同日緊急前房洗浄を施行し,頻回のステロイド結膜下注射・点眼を開始した。前房炎症は速やかに鎮静化し,角膜実質浮腫は徐々に軽快も一部上皮浮腫が残存,角膜内皮細胞数は460/㎟と著明な減少を認めた。視力は0.3まで回復し,前嚢下白内障・続発緑内障などの合併症を生じなかった。 スズメバチ角膜刺傷は予後不良で失明に至る例も珍しくないが,受傷後早期の前房洗浄と頻回の結膜下注射を中心としたステロイド治療により比較的良好な視力維持が可能であった。 (南予医誌 2012;13:35-43.)Key Words:スズメバチ角膜刺傷, 前房洗浄, ステロイド, 角膜内皮細胞

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です