南予医学雑誌 第13巻 第1号
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南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-32-て適応が拡大してきている。 Mohs軟膏の使用法は,症例や施設によって調剤内容や固定時間,処置間隔が様々であり,いまだ指針は確立されていない。 調剤内容に関しては,他施設の報告では(表1)に示すような内容であった。蒸留水と塩化亜鉛は多くの施設で1:2の割合で調剤されており,当院においても蒸留水25㎖に対し塩化亜鉛50㎖の割合で調剤している。また,亜鉛華澱粉が多いと硬くなり,グリセリンを加えると軟らかくなるので,腫瘍の部位や外用後の姿勢の条件,本人のADLなどに応じて適切な硬さに調整することが必要となる3)。さらに,外用後は体温や滲出液により軟化することも考慮する必要がある。当院では亜鉛華澱粉の量は一定とし,グリセリンの量で適宜調整している。 Mohs軟膏の固定時間や処置間隔については一定の見解が得られていないが,1㎜の厚さで塗布したとき24~48時間で約5㎜,72時間で約10㎜の深さまで組織が硬化するとの報告がある4)。自験例では,CT画像上,症例1では24時間の接触で約9㎜,症例2では約30分の接触で約3㎜の深さまで硬化していた(図3)。頭頸部におけるMohs軟膏処置では硬化深達度が大きいと頸動静脈破綻により大出血を来たす恐れがあるため,腫瘍と大血管の位置関係には注意が必要である5)。治療経過中に画像検査にて腫瘍と大血管の位置関係を確認し,症例毎に固定時間や処置間隔を検討する必要がある。 Mohs軟膏処置に際しては,正常皮膚への影響も問題となる。施術者は手袋を着用し,腫瘍周囲の正常皮膚に油分を含む軟膏類(ジメチルイソプロピルアズレン軟膏(アズノール軟膏0.033%®),白色ワセリン,市販のマニキュアなど)を厚めに塗布して接触性皮膚炎を予防する必要がある。症例1では腫瘍辺縁をガーゼで被覆し,症例2ではアズノール軟膏0.033%®を塗布することで正常皮膚を保護した(図4)。また,Mohs軟膏塗布部分に疼痛を伴うことがあるため,鎮痛剤の予防投与が必要になることがある。症例2では処置前にオキシコドン速放剤を内服させたにも関わらず,疼痛のため30分間しか接触させられなかった。 Mohs軟膏は頭頸部癌患者における緩和治療に大変有用と考えられるが,使用にあたっては症例に応じて使用部位,痛みに対する閾値やADLなどを考慮した上で外用方法や接触時間をその都度検討し,疼痛や接触性皮膚炎にも配慮する必要がある。ま と め Mohs軟膏処置によりQOLを改善し得た頭頸部進行癌の末期症例2例を報告した。(表1)他施設の報告における処方例(文献3より改変して引用)施設蒸留水(㎖)塩化亜鉛(g)亜鉛華澱粉(g)グリセリン(㎖)A250500250使用時に5%混合B2550適量適量C6554.63920D20402020当院255025適宜

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