南予医学雑誌 第13巻 第1号
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木谷、他:Mohs軟膏の使用経験南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-31-図2図2使用前12時間後使用前12時間後Mohs軟膏処置前Mohs軟膏処置後12時間(図2)症例2自宅でのガーゼ交換が困難となったため入院した。 経過(図2):入院時に頸部の腫瘍は直径10㎝以上に増大しており,広く自潰していた。多量の滲出液,悪臭を伴っていたため,腫瘍の縮小,滲出液や悪臭の軽減を目的にMohs軟膏処置を開始した。Mohs軟膏を塗布したガーゼを腫瘍表面にあて30分間固定後除去し,付着しているMohs軟膏をガーゼで払拭した。Mohs軟膏が作用した腫瘍の表面は白色調に硬化していたが,症例1よりは軟らかく,CTでは硬化部がやや高吸収に描出され,深達度は3㎜程度であった。処置後4-5日頃より硬化組織は脱落し始め,1週間後にはほぼ完全に脱落し滲出液が増量してくるため,週に1度のペースで処置を反復した。2011年3月下旬に永眠されるまで,腫瘍の増大傾向は明らかに抑制され,滲出液や出血も軽減できた。考 察 Mohs軟膏は1930年代に米国の外科医Frederic E. Mohs博士が創始した “chemosurgery”に用いる外用剤で,皮膚癌などの病変に対する根治的治療として使用されていた1)。主成分の塩化亜鉛が腫瘍面の水分によってイオン化し,亜鉛イオンのタンパク凝集作用によって腫瘍細胞や腫瘍血管,および二次感染した細菌の細胞膜が硬化して止血,殺菌効果が得られると考えられている。1941年以来,Mohs軟膏を使用した治療法が相次いで報告されたが,原法で使用されたアンチモン,アカネグサが入手困難であったため,本邦では普及しなかったとされている2,3)。近年,本邦でも容易に入手可能な塩化亜鉛,亜鉛華澱粉,グリセリンを混合する調整法が報告され,Mohs軟膏として汎用されるようになり,皮膚癌だけでなく,悪性腫瘍の皮膚浸潤,皮膚転移症例に対する緩和治療とし

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