南予医学雑誌 第13巻 第1号
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南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-29- 頭頸部癌皮膚浸潤例におけるMohs軟膏の使用経験 木 谷 卓 史,相 原 隆 一,吉 田 正,清 水 義 貴 市立宇和島病院 耳鼻いんこう科受稿日 平成24年7月10日受理日 平成24年7月25日連絡先 〒798-8510 愛媛県宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院 耳鼻いんこう科 木谷 卓史E-mail:kitani.0809@yahoo.co.jpはじめに 頭頸部領域では悪性腫瘍による皮膚浸潤や腫瘍の自潰が生じると,出血,疼痛,感染,滲出液などにより患者のQOLが著しく損われる。従来はガーゼ類による被覆・圧迫や止血剤による処置などが一般的に行われていたが,近年Mohs軟膏の使用によりQOLを改善させた症例が報告されている。当院においてもMohs軟膏を用いることにより進行頭頸部癌患者のQOLを改善し得た症例を2例経験したので,Mohs軟膏の作用時間,深達度,使用法などについて報告し,若干の考察を加える。症 例 症例1:51歳,男性 診 断:進行上顎癌 現病歴: 2008年4月左上顎癌(扁平上皮癌 T4aN2bM0,StageⅣ)に対し,左上顎全摘,左保存的頸部郭清術を施行した。腫瘍は頭蓋内に浸潤していたため,手術後も断続的に化学療法(ドセタキセル)を施行していた。局所の残存腫瘍は増大なく経要 旨 頭頸部癌患者で皮膚浸潤を呈する症例や,外表に自潰する例では出血,滲出液,悪臭などによりQOLが著しく損なわれる。今回,我々は従来皮膚科領域で使用されていたMohs軟膏を頭頸部癌における皮膚浸潤・自潰例に使用することで,出血量,滲出液による汚染ならびに,腫瘍の増大を抑制し,QOLの改善に有効であった2症例を経験した。Mohs軟膏は頭頸部癌皮膚浸潤例における局所制御の目的に有用であると考えられたが,実際の使用においては指針が確立されておらず,症例により工夫が必要であることがわかった。 (南予医誌 2012;13:29-34)Key Words:Mohs軟膏,頭頸部癌,皮膚浸潤,QOL

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