南予医学雑誌 第13巻 第1号
3/84

南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-1- 展 望 日本における肝移植と愛媛大学における 生体部分肝移植の現状 藤 山 泰 二 愛媛大学 肝胆膵・移植外科 (南予医誌 2012;13:1-12.)受稿日 平成24年4月23日受理日 平成24年7月4日連絡先 〒791-0295 愛媛県東温市志津川 愛媛大学大学院医学系研究科 肝胆膵・移植外科学 藤山 泰二E-mail:taiji@m.ehime-u.ac.jp1.日本における肝移植の歴史 1989年7月オーストラリアのStrongらが生体部分肝移植の世界初の成功例を報告した1)。その時の患者は胆道閉鎖症の日本人の男児で,ドナーは母親であった。その当時脳死下の臓器摘出が困難な状況にあった日本において,同年11月島根医科大学の永末らが日本初の生体部分肝移植を行った2)。その後1990年6月小沢,田中らが京都大学で日本2例目,幕内らが信州大学において日本3例目の生体部分肝移植を行い日本の肝臓移植は一気に進展した。これまでに日本の63施設で6000例以上の肝移植手術が施行され,現在年間500例近い肝移植手術が行われている(図 1)。 一方脳死肝移植は,1997年6月臓器移植法が制定され1999年2月日本で第一例目の移植が施行された。その後海外における臓器売買,渡航移植が問題となり,2009年7月に臓器移植法が改正され,2010年7月から本人の臓器提供の意思が不明な場合にも,家族の承諾があれば臓器提供が可能となった。結果として脳死下の移植件数が増加し,現在年間40~50例程度の脳死肝移植が施行されつつある。脳死肝移植を受けるためには,全国に22ある脳死肝移植認定施設(表1)に連絡し,各施設での適応評価後日本臓器移植ネットワークに登録し,医学的緊急性,血液型,待機期間に応じて順番を待つ必要がある。依然待機期間が長く,2010年12月末までに肝移植を受けた95名の平均待機期間は,683日(約1年11カ月)であったと報告されている。2012年4月現在403名の方が待機している。2.レシピエント適応疾患と禁忌事項 愛媛大学では2001年9月に劇症肝炎の患者に第1例目の生体部分肝移植を行い,2011年12月までに45例,47件(2例の再移植を含む)の生体部分肝移植を施行して

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です