南予医学雑誌 第13巻 第1号
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南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-26-ターチューリップ下大静脈フィルターリトリーバルセット(GUNTHER TULIP VENA CAVA FILTER RETRIEVAL SET,COOK社)を用いて回収した。本来は下大静脈フィルターの回収に用いられるが血管内異物除去カテーテルとしても保険適応がある。ギュンターリトリーバルセットのスネアループは1ループ構造であるが血管腔に対してほぼ同軸になるため,異物が血管内腔に直線状に存在している場合,回収は比較的容易と考えられる。本症例ではカテーテル断端が上大静脈から右心房内に直線状にとどまっており残存カテーテルの捕捉,回収は容易であった。2症例目ではエンスネアシステムを用いた。エンスネアシステムのスネアループは3ループ構造であり血管内の全周性に広がることで異物を捕捉するのが更に容易になっている。血管内異物が右室や肺動脈に達した症例では,右房内や上大静脈に留まっている症例に比べて捕捉が難しくなると同時に,捕捉しても肺動脈や三尖弁を通過しての引き抜き操作が困難となるため,発見したらできる限り早く回収をすることが重要とされている。異物が心腔内へ移動した症例においてもエンスネアシステムは有用であると考えられる。カテーテルインターベンションでの摘出成功率は95%とされており6),回収方法としてまず考慮されるべき手技である。現在当院ではエンスネアシステムをカテ室に常備しており,血管内異物症例では優先して使用する方針である。 経皮的に回収できなかった症例に対して,開心術7),開胸術8)により摘出した報告がある。経皮的に抜去できなかった理由として遺残物が血管壁に癒着していたことがあげられている。また,異物カテーテルが長期血管内に遺残していた例では捕捉時にカテーテル断端が更に断裂して移動してしまう危険性も懸念される。カテーテルが血管内に遺残した場合の合併症の発生率が高率であるとする報告がある一方,長期にわたり合併症をおこさず経過している症例も報告されている。経皮的カテーテルインターベンションによる異物除去が困難であれば,開胸術や開心術は侵襲的な手技であり経過観察を行うことも一つの方法であると考えられる。 今後,抗癌化学療法を外来で行う患者の割合が増え,CVポート留置も増加することが予想される。CVポートの留置においてはピンチオフを来さないために透視装置やエコーを使用しながら,鎖骨下静脈より末梢側での胸郭外穿刺を我々は提唱したい。またピンチオフした際の処置については熟知しておく必要があると考えられる。結 語 今回,我々は外来化学療法中にピンチオフシンドロームを呈し断裂したカテーテルポートの抜去をそれぞれ異なる方法を用いて成功した2例について報告した。参考文献1) Aitken DR, Minton JP: The ‘pinch-off sign’: a warning of impending problems with permanent subclavian catheters. Am J Surg 1984; 148: 633-636.2) Fisher RG, Ferreyro R: Evaluation of current techniques for nonsurgical removal of intravascular iatrogenic foreign bodies. AJR Am J Roentgenol 1978; 130: 541-548.

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