南予医学雑誌 第13巻 第1号
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白井、他:死後の処置アンケート南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-17-フケア・死後の処置・看取りケアなどの教育や基準の充実についてなどがあった。 Ⅳ.考 察 家族と一緒に処置をした経験の「ある」人の中では,家族からの希望が90%以上あり,家族は一緒に行うことを望んでいることがわかる。今回の調査では家族からの希望でなく,看護師の働きかけにより一緒に処置を行った例が8%と少なかった。小島ら4)が死後の処置に参加した家族は,参加しなかった家族よりも処置に対しより高い満足感を得る・家族の死後の処置への参加の有無は看護師の働きかけによって左右されると述べているように,家族の処置への参加には看護師の判断・声掛けが重要といえる。家族はどんなに力を尽くしても尽くしきれない思いが残ることがあり,処置を一緒に行うことは家族が自分を責めないように「できることは行った」「最後のケアを自らの手で行えた」という満足感につながり,患者の死を受け入れていくために必要な一つの方法ではないかと思われる。しかし,処置においては地域の風習などにより家族が参加できない場合もあるため,状況に即した声掛けが必要と思われる。 「しないほうがよい」理由として,「刺激が強い」「外傷が激しいとショックをうける」「病んだ体をみせたくない」という家族を気遣う看護師の思いや,「気を遣ってやりにくい」「時間がかかる」など看護師自身の思いがある。 家族と一緒に処置を「したいと思わない」人が,一緒に処置をした経験のない看護師の50%を占めたことは,業務の煩雑さの中からくるものや,悲嘆にくれる家族への慰めの言葉がみつからなかったり,どう対処してよいかわからない看護師の戸惑いと,心のゆらぎなどからくるものと思われる。近年,グリーフケアが重要視される中で,当院ではまだまだグリーフケアに対する関心が低いためと考える。 看護教育における授業の中では,死後の処置についてはあまり重要視されていないのが現状であり,実際には臨床現場での教育に依存している。家族参加の意思確認を「必ずしている」理由には,「先輩からの教え」「看護基準にある」が多かったが,院内の看護基準をみたことのない人が44%いることは,指導にあたる先輩看護師も基準に沿ってではなく,代々の先輩看護師からの指導内容を伝えているような状態であると思われる。当院は臨床経験年数10年以上が77%を占める経験者豊富な病院である。家族と一緒に処置を「しないほうがいい」と答えた中には10年以上が71%(15人)を占め,臨床において指導にあたる中堅看護師以上の処置に対する意識向上の必要性を感じた。今後の処置に対する要望の中にもグリーフケア・死後の処置・看取りケアなどの教育や,基準の充実についての意見が多くあることより,処置の基準・手順を充実させ,時代と共に変化していく処置に対応できる情報を取り入れながら,グリーフケアを充実させていく教育を院内全体で行っていく必要があるのではないだろうか。 現在,当院では固定チームナーシングが実践され,患者・家族と密に関わる時間が増している。小林5)は死後ケアの場面で最も重要視しなければならないのはコミュニケーションと述べている。処置において何を着せたいか・どんな化粧をしてあげた

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