南予医学雑誌 第13巻 第1号
12/84

南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-10-成績に影響する最近のトピックスとして抗HLA抗体による液性拒絶反応,C型肝炎ウイルスの再感染に対する対策,術前術後の栄養療法などが上げられる。また長期フォロー患者数の増加とともに,免疫抑制剤による新規糖尿病の発症,腎機能障害,悪性疾患罹患率の増加などの問題が指摘されている。8.手術費用 現在多くの肝疾患に対する肝移植が保険適応となっており,月約8万円以上の高額医療費に関しては,還付される制度があり金銭的負担は大きく軽減されている。2010年4月より著しい肝機能障害を認める患者には障害者手帳の交付も始まり,肝移植術後は障害者手帳の1級が交付されることとなった。現在術後外来通院や再入院時に必要な医療費,免疫抑制剤などの金銭的負担はすべて国からの補助が受けられる。9.肝移植の今後 2008年国際移植学会が中心となって臓器取引,移植商業化,移植ツーリズムを禁止したイスタンブール宣言が取りまとめられ,2010年世界保健機関(WHO)でも海外での渡航移植の自粛を求める新指針が制定され,日本人の渡航移植は原則不可能となった。2009年7月の臓器移植法の改正を受け,今後日本でも脳死臓器移植の増加が予想される。しかし臓器移植に関わる救急医療の整備,提供施設の負担の軽減,提供者遺族ケアの充実,移植ネットワークや移植施設の体制強化など解決すべき問題点も多い。 選択的免疫抑制剤の開発,免疫寛容の誘導,ウイルス性肝炎,肝細胞癌など各種疾患の治療など肝移植における治療上の問題の改善とともに社会的な体制の強化が急務である。<参考文献>1) Strong RW, Lynch SV, Ong TH, et al.: Successful liver transplantation from a living donor to her son. N Engl J Med 1990; 322(21): 1505-1507.2) Nagasue N, Kohno H, Matsuo S, et al.: Segmental (partial) liver transplanta-tion from a living donor. Transplant Proc 1992; 24(5): 1958-1959.3) Mazzaferro V, Regalia E, Doci R, et al.: Liver transplantation for the treatment of small hepatocellular carcinomas in patients with cirrhosis. N Engl J Med 1996; 334(11): 693-699.4) Takada Y and Uemoto S : Liver trans-plantation for hepatocellular carcino-ma: the Kyoto experience. J Hepato-biliary Pancreat Sci 2010; 17(5): 527-532.5) 梅田瑠美子, 山岸由幸, 海老沼浩利, 他: アルコール性肝硬変に対する部分生体肝移植症例から断酒期間を含めた適応についての検討. アルコールと医学生物学 2010; 29: 41-46.6) Maddrey WC and Van Thiel DH: Liver transplantation: an overview. Hepatol-ogy 1988; 8(4): 948-959.7) 藤山泰二, 渡邊常太, 串畑史樹, 他: 肝移植の適応・タイミング 肝移植待機中に肝腎症候群に伴う腎不全を発症し周術期管理に難渋した原発性胆

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です