南予医学雑誌 第13巻 第1号
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藤山:肝移植の現状南予医誌 Vol.13 No. 1 2012-9-は87.5%と良好である。成人では,難治性拒絶反応,重症感染症など早期の問題,また肝細胞癌の再発,C型肝炎ウイルスの再感染,慢性拒絶反応など後期の問題により長期成績は低下し約70%であった。当院における単変量解析による予後危険因子の解析では,左葉グラフトが危険因子であった(図5)。近年,ドナー年齢がレシピエント予後危険因子であるとの報告が増えつつある16)。 血液型不適合移植は,血液型抗体に伴う液性拒絶反応によって重篤な合併症を招来するため従来禁忌とされていた。しかし近年術前の血漿交換やリツキシマブなど新た(図5) 早期死亡例における予後g危険因子の検討早期死亡例におけるFigure 5予後危険因子の検討右葉単変量解析危険因子P値左葉or 後区域グラフト(左葉)0.0197GRWR 0.8>0.826Logrank testP0019ドナー年齢50歳<0.574レシピエント年齢60歳<0.158MELD20<0193P=0.0197MELD20<0.193PC shuntの有0.282な免疫抑制療法を行うことにより治療成績が著明に改善しており17),年間60例前後の血液型不適合肝移植が行われている。我々の施設でも2例の成人間血液型不適合肝移植を行っており,2名とも良好に経過している。 現在,C型肝炎に関する新規抗ウイルス薬の開発が進んでおり今後肝移植後の再感染に対する応用が期待される。肝細胞癌の肝移植に対する保険適応はミラノ基準内に限定されているが,現在各施設で移植適応を拡大する方向で検討が進んでいる。また術前内科的治療によるdown stagingの有効性や術後の補助化学療法などの検討も行われており,今後の新たな治療の展開が期待される。7.レシピエント術後早期合併症と後期合併症 日本における生体部分肝移植も第1例目が施行されてから今年で23年目となり,術後早期の問題点に関する対策は随分改善し,術後成績も徐々に向上している。術後

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