南予医学雑誌20巻
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 本症は入院翌日より心リハを開始し,悪化イベントもなく急性期の心リハを終了した。Kunzら9)は急性期病院の退院時CPXの各値はAT V・O2 12.19ml/min/kg,Peak V・O2 17.26ml/min/kgと報告したが,本症の退院時CPXでは各値で低値を示した。加え,GittらはAT V・O2 < 11ml/min/kg, Peak V・O2 ≦14ml/min/kgの場合,死亡率が高いことを報告した10)。これより,本症は死亡リスクが高い状態であると予測されるため,生命予後を改善する目的で心リハを継続する方針となった。 β遮断薬の登場により,心不全患者の考   察-47-南予医誌 Vol.20 No. 1 2020生命予後は大きく改善したが,運動耐容能に対しては十分な改善は示されていない11)。生命予後と運動耐容能は非常に密接な関係があるが,左心室機能と運動耐容能には相関がないことが報告されている12)。心リハによる運動耐容能の改善の主なメカニズムは,左室リモデリングの抑制13),毛細血管密度の増加,ミトコンドリア密度の増加,組織における酸素摂取能力の改善,血管拡張能の改善といった末梢循環や骨格筋機能の改善に代表される14)。加え,自律神経機能やQOLの改善が得られ,生命予後の改善につながる。心リハプログラムは主に有酸素運動やレジスタンストレーニング,患者教育で構成される。AT;anaerobic threshold, Peak V・O2;peak oxygen uptake, V・E vs. V・CO2スロープ;ventilatory equivalent versus carbon dioxide output, ΔV・O2/ΔWR ;oxygen uptake-work rate relationship

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