南予医学雑誌 第17巻
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南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-60-(図2)腹部造影CT検査にて 左:径25㎜の仮性動脈瘤を認めた。 右:腹腔動脈幹の閉塞を認めた。病理診断:3。4㎝×2。1㎝, Papillary adenocarcinoma of the duodenum, UICC TNM: pT3,N0,M0,stageⅡA であった。術後経過:術後3日目までの経過は良好であった。術後4日目に腹痛と38度の発熱がみられたため,腹腔内膿瘍を疑い抗生剤加療を開始した。腹痛は徐々に軽快したため術後6日目に経管栄養を開始した。しかし術後7日目にドレーンの排液が混濁し,腹水アミラーゼ値が20,394U/Lと上昇したため,膵液瘻と診断し抗生剤加療を継続した。術後16日目にドレーンから少量の出血がありCT検査を施行した。膵液瘻による腹腔内膿瘍を認めたが,仮性動脈瘤は確認できなかった。止血剤とオクトレオチドを使用し,輸血を行い保存的治療を継続した。術後24日目に下血し,ヘモグロビン5。8g/㎗まで低下し,ショックバイタルとなった。再度造影CT検査を施行し,総肝動脈近傍に径25㎜の仮性動脈瘤を認めた。仮性動脈瘤からの出血が膵空腸吻合部の縫合不全部消化管に流入し,下血したものと判断した。さらに腹腔動脈起始部の完全閉塞を認めた(図2)。止血目的に血管造影検査を施行した。血管造影検査:総肝動脈・脾動脈は上腸間膜動脈からの側副血行路を介し描出されており,胃十二指腸動脈断端に仮性動脈瘤を確認した(図3)。腹腔動脈が閉塞していたため,上腸間膜動脈から側副血行路経由で総肝動脈にガイドワイヤ挿入を試みたが,側副血行路の屈曲が強く断念した。 術後26日目,27日目にも出血は持続し,輸血を施行した。保存的加療は限界と判断し,術後28日目に止血目的に再手術を行った。再手術に際し,術後約1ヶ月目であり,さらに膵液漏を生じているため腹腔内は強固に癒着していることが予想された。出血がコントロールできない場合術中死の可能性が考えられた。腹腔動脈へ血流を供給している脾動脈を結紮することで止血できると考え,大動脈周囲へアプローチすることとした。大動脈周囲へのアプローチは後腹膜経路で到達すれば癒着に影響されないと考え,後腹膜経路でアプローチした。再手術所見:全身麻酔下,右半側臥位とし手術を開始した。Stoneyの斜切開にて皮膚切開をおこない後腹膜層を剥離し,大動脈周囲へ到達した(図4)。上腸間膜動脈,腹腔動脈を確認し,それぞれテーピングし

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