南予医学雑誌 第17巻
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中川、他:標準体型の若年男性に発症した上腸間膜動脈症候群南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-47-序言 上腸間膜動脈症候群(Superior mesenteric artery syndrome:SMA症候群)は,十二指腸水平脚がSMAと腹部大動脈および脊柱に圧迫されることにより,食後の腹痛や嘔吐,腹部膨満感などの腸閉塞症状を来す,比較的稀な疾患である。症例の3分の2は10~39歳の痩せ型の女性にみられ1),主な原因として,摂食障害や重症熱傷,外傷などによる急激な体重減少や長期臥床による圧迫,先天的または手術操作などによる後天的な解剖学的異常などが挙げられる。 今回我々は,標準体型の生来健康な若年男性に発症した SMA症候群の1例を経験したので報告する。【症 例】19歳男性【主 訴】腹痛,嘔気,嘔吐【現病歴】2015年12月23日,昼食を摂取した1時間後から腹痛が出現した。30分程の臥床で自然に軽快したが,18時頃から再び腹痛を自覚し,頻回の嘔吐も認めたため,当院を受診した。嘔吐は飲水のみで誘発され,吐物は非血性かつ食物残渣様であり,最終排便は前日の朝で,普通便であった。【既往歴】高校3年時の学校検尿で尿蛋白陽性【生活歴】専門学校生,生魚や生肉などの食事歴なし,同じ昼食を摂取した友人に同様の症状を呈する者なし【薬剤歴】特記事項なし【身体所見】身長 175㎝,体重 62㎏,BMI 20㎏/㎡,脈拍 101/分・整,血圧 136/89㎜Hg,SpO2 96% (room air),体温 37.3℃,眼球結膜黄染なし,眼瞼結膜貧血なし,心音:整・雑音なし,肺音:清,腹部:平坦・軟・腸蠕動音正常・心窩部~臍上部圧痛あり・腹膜刺激徴候なし【入院後経過】 入院時の血液検査ではWBCの上昇以外,特記すべき所見を認めなかった(表1)。腹部単純CT検査では,胃から十二指腸水平脚にかけて高度な拡張および液体貯留を認めた(図1)。十二指腸水平脚は,SMAと腹部大動脈(Aorta)に挟まれた部位で狭小化しており,矢状断でもAorta-SMA angleの狭小化が認められた。以上より,十二指腸水平脚がSMAとAortaに挟まれたことにより通過障害をきたした上腸間膜症(表1)入院時血液検査

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