南予医学雑誌 第17巻
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南予医誌 Vol.17 No. 1 2016-28-管造影上混同しやすい5)。当院での不成功例についても,後の検討で副肝静脈から採血したと思われる症例が数例あった。対策としてAVS前の造影CTによる副腎静脈の検討が挙げられる。多くの施設で造影CTが行われており,副腎静脈の位置や流入角度,副肝静脈との位置関係等,AVSに有用な情報が得られる2),4),5)。また手技中のコーンビームCTの使用も非常に有用である。CT様の画像が得られるためカテーテルが正確に副腎静脈に挿入されているかを確認することができ,AVSの全例に行っている施設もある2),4),5)。副腎静脈の同定に不安がある場合には積極的に利用すべきであると考える。 また右副腎静脈は細く短いためカテーテルが逸脱しやすい。中心静脈を選択できても採血に十分な血流が得られない場合がしばしばあり,カテーテル内で血栓を形成することもある。カテーテル先端の位置をずらす,先端の形状を変える,採血中に透視下で確認する,採血後に確認造影をする,逸脱が疑われる場合には再度採血を行う,等の対応をしているが,採血に難渋することも多い。2015年7月以降は先端にスリットが入ったマイクロカテーテル(ゴールドクレスト:コーシンメディカル)を使用しており,採血の負担軽減に役立っている。 AVSの主な合併症として下大静脈内膜損傷と副腎出血が挙げられる。下大静脈内膜損傷は右副腎静脈検索時のカテーテル操作で起こりやすいとされ,造影を行った際にpoolingや血管外漏出等の所見が認められる。疼痛は一過性で鎮痛剤を使用して検査を続けることも可能であるが,右副腎静脈へのカテーテル挿入や採血が困難となることがある4)。当院の症例も右副腎静脈検索の際に患者が疼痛を訴え,血管造影とコーンビームCTで血管外漏出を確認した(図3)。この症例の右副腎静脈採血の結果は血管選択不成功であった。 副腎出血はより重篤で,副腎静脈造影時の圧上昇により腺内の小静脈が破裂し内部に出血や梗塞をきたす。発症直後より強い疼痛,特に胸痛として出現することが知られており,急性冠症候群や大動脈解離との鑑別を要する4)。当院でも1例経験され,右副腎静脈を造影した際に患者が疼痛を訴え,血管外漏出を認めた。出血後に採血し得たが,AVS後のCTで右副腎の腫大と造影剤の血管外漏出を確認した(図4)。この症例の右副腎静脈の血管選択は成功であった。後で血管造影を見直すと副腎静脈が通常よりやや細く縮れて造影され,元々血管が脆弱であった可能性が考えられた。 また1例は右副腎静脈を造影した際に造影剤のpoolingが見られ(図5),患者が右側腹部の疼痛を訴えた。副腎出血の疑いがあるため主治医と協議し,採血することなく検査を中止した。検査後のCTでは出血を示唆する所見は確認できなかった。血管造影で認めたpoolingの所見は,実質臓器や腫瘍の濃染を見ていたと考えられた。通常の造影やガイドワイヤー操作による刺激で疼痛を訴える患者も少なくなく,症状も出血と鑑別が困難である。このような場合にもコーンビームCTでの確認が有用と考えられる。 最近ではマイクロカテーテルを用いて,通常の副腎中心静脈採血部位より上流の支脈静脈から超選択的な採血も行われている。一側副腎内での濃度差を検出できれば,部分切除による外科的侵襲の軽減や両側副腎病変に対する治療が期待できる2),4)。通

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