南予医学雑誌 第15巻
3/132

南予医誌 Vol.15 No. 1 2014-1-   総   説 造血器腫瘍に対する治療法の変遷  ―分子標的治療薬を中心に― 鹿 田 久 治 市立宇和島病院 血液内科 (南予医誌 2014;15:1-9.)受稿日 平成26年2月12日受理日 平成26年7月4日連絡先 〒798-8510 愛媛県宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院 血液内科 鹿田 久治序  言 白血病,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫をはじめとする造血器腫瘍に対する治療法の進歩はめざましく,特に疾患特異的分子制御異常を標的とした分子標的治療薬(モノクローナル抗体や小分子化合物)の開発により,飛躍的に治療成績が向上した。本稿では,分子標的治療薬や新規薬剤の開発が特に盛んな慢性骨髄性白血病,多発性骨髄腫及び低悪性度B細胞性リンパ腫に対する治療法の変遷を紹介する。1.慢性骨髄性白血病 慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia : 以下CML)は多能性造血幹細胞の異常により白血球や血小板増加をきたす白血病の一種である。多系統の細胞の増殖がみられるクローン性疾患であることから,WHO-2008分類では骨髄増殖性腫瘍に分類される。CML患者の95%以上でt(9;22) (q34;q11)により形成されるフィラデルフィア(Ph)染色体が検出され,これが原因遺伝子と同定されている。この染色体異常は9番目の染色体と22番目の染色体が相互転座をきたし,BCR-ABLという融合蛋白が構成される結果,チロシンキナーゼの異常活性が生じ細胞の異常増殖をきたす。この染色体異常に選択的にかつ直接作用するチロシンキナーゼ阻害剤の開発に伴い,CMLの治療成績は劇的に向上した。 (図1)にCMLに対する治療法の変遷を示す。CMLは2000年頃までは不治の病とされ,ブスルファンやシタラビンやハイドレア等の抗がん剤やインターフェロンが治

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る